情動と音楽の起源―情動の進化と脳機能 Evolutional Aspects of the Emotional Brain

慶應義塾大学名誉教授、理化学研究所 脳科学総合研究センター客員研究員、山角病院 精神科 勤務医

川村 光毅 Koki Kawamura


サマリー

  ごく大雑把に眺めても、動物の中枢神経系は、サカナ→トリ→サル→ヒトと進化するにつれて、形態的にみて、脊髄→脳幹→大脳辺縁系→間脳→大脳皮質と順次、活動の中心が脳の前方/先端へと移る。「高次化」するといってよいだろう。機能的にみても、「感覚・知覚・認知・認識」、「反射・運動・能動的活動」、「感情・情緒・情動・感性」、「発声/発語・会話/コミュニケーション・歌唱/音楽演奏」などの、それぞれの諸相で、「粗」から「緻」へと表現形態が複雑に変化する。
脳活動をベースに考えるとき、その分析のアプローチの仕方に、当然のこととして、様々な見解や立場があろうが、本稿では、「認知、情動、運動」という3つの大きなシステムを柱に据えてみた。そして、音楽表現にスポットを当てて総合的に考察するように試みた。
   脳の各部位が全体の系の中で、それぞれの領域/領野が「局所的・特殊的」に活動し、機能を発揮している中で、それらをできるだけ総括的に捉えて考察した、いわば未成熟の試論である。とはいえ、口演形式なので、一本筋を通した立論もここには求めてない。それをいいことに、アンバランスを承知の上で、今までどちらかというと関心の低かった、“大脳基底核”について多少詳しく、その重要性に力点を置いた。
   さらに欲を言えば、進化論的に情動をベースにして、大脳基底核と連合野を主役に据えて、大脳皮質→基底核→視床→大脳⇔小脳が形成する「巡回型神経回路」、造語で別言して、「再生産循環生体回路」にまで紙数が許されれば深入りしてみたかった。

キーワード:情動、認知、運動、連合野、基底核、辺縁系


「情動と音楽の起源」あるいは「脳と情動の進化」というようなテーマで、脳科学の立場から話をするように依頼されました。講演向きの話題としてこれをまともにとりあげるには範囲が広すぎますし、それに、まとまった考えを私自身もっているわけではありませんので、かなり荷が重いように思いました。

今日は、サカナのレベルからトリ、ネズミ、サル、そして、ヒトの段階へと動物が進化するにつれて、認知機構や感情の受け入れや表現の仕方がどう変わるか、その脳内基盤について、考えながら話をさせて頂きます。

私たちが音楽を、オペラを、広く美術や芸術を楽しむことができるのはすばらしいことです。認知機構、情動機構が相当高度化してないと、音楽を作曲し、演奏し、傾聴することはむずかしいし、さらに言葉の認識をともなうオラトリオやオペラを享受することもできません。このようなハイレベルの芸術を創造し、受用することのできる人間の脳は、どのように進化 をとげてきたのでしょうか? 

濠上問答(図1

魚が遊泳しているのを荘子と恵子が橋の上から見ていました。荘子が「みんなで楽しそうに泳いでいるな」と。すると恵子は「どうしてそれがわかるんだい?魚じゃないんだからわからないじゃない?」荘子は「見ればわかるじゃないか」。恵子「いや、見たってわかりはしない、そういうのは科学的ではない」と、そう言ったかどうか。
私たちは今でも動物の心の動きを心理学的に解釈して満足しています。
小泉先生のイントロダクションや第1回、第2回のセミナーにもありましたが、私たちは現象論的な心理学と唯物的な脳科学とが接点を持てる時期に入りつつあります。


図1 濠上問答:橋の上から川に魚が泳いでいるのを眺めながらの荘子と恵子の頓知問答。

脊椎動物の脳機能の比較

サカナの脳をみてみますと、中脳がとても発達しています。大脳は非常に小さいですが、マウスやサル、さらにヒトになりますと一段と大きく発達してきます。人間の脳がこうなるまでに、脳幹が主に活動している動物、それから大脳辺縁系の活動が活発化した動物、その上に大脳皮質が発達した動物というように、脊椎動物の脳が進化してきたことがわかります。
マクリーン(Paul MacLean)は、脳の深いところに脳幹という進化的に古い領域があり、その上に情動脳という大脳辺縁系、最後に大脳皮質が新しく形成されるというモデルを描きました(図2)。これを系統発生学的、または進化学的にみて、爬虫類の下位に魚の脳があり、爬虫類の上位に哺乳類の脳があると説明しています(MacLean, 1973,1982)。単純な言い方ですが、生命の根源がベースにあり、その上に本能や情動に関わる領域が、そして最上の階層に認知機能の領域が形成されるに至るという(脳活動の形態基盤ともいうべき)姿を上手に説明しております。今日、私たちは、もう一歩進んだ方法で説明できる段階に入っています。


図2 マクリーンの「脳の階層三位一体説」といわれるもので、恒温動物の脳に階層性(ヒエラルキ-)を想定し、原始爬虫類脳(protoreptilian brain)、旧哺乳類脳 (paleomammalian brain) と新哺乳類脳(neomammalian brain)と呼んだ(MacLean, 1967, cited from the books of 1973 & 1982)。

 音の周波数という要素を識別するという段階から、どのように音楽を聴き、演奏し、さらに作曲するという高いレベルの認識にまでつなげられるか、あるいは、光の性質(明るさ、強さ、色)を分析するというレベルから、形と結びつけて視覚認識を美術にまで高められるか。その形態学的な基盤としての神経回路が、脳内のどこに、どのように作られているのか。そして、ヒトの脳はサカナ、トリ、ネズミと、基本的にどこが似ていて、進化のプロセスのなかでどのように変化し、発達して、より次元の高いレベルの機能を発揮するようになったのか。神経科学の研究が進み、現在これらの問題が明らかになりつつあります。
サルやヒトの段階になりますと、視覚系と聴覚系が非常によく発達してきます。このように言いますと、におい、味の研究者に叱られるのですが、文字や言葉を使って事象を概念化して、体系化した思考をはたらかせることは、香道やソムリアや料理の専門家のように特別に感性を磨き上げた人は別として、一般の人にとっては難しいのではないでしょうか?
先ずは、はじめに、視覚系と聴覚系を並べて取り上げてみます。

視覚系と聴覚系の認知機能

 視覚系は、アメリカ人のヒューベル (David Hunter Hubel) とスウェーデン人のウィーゼル(Torsten Nils Wiesel)の2人が、ハーバード大学の研究室で1960年代から詳しく研究しました(1962,1965,1968)。視覚系統は、網膜から間脳の領域に刺激・興奮が伝わり、第1視覚領(V1)、第2視覚領(V2)、第3視覚領(V3)―ここに大脳皮質の領域を略図で示しましたが―このように皮質に領域区分がなされています。同じような性質をもった神経細胞(neuron)の集団があり、たとえば第1視覚領では、点や線を認識します。その次の段階で、四角、三角、さらに立体的な箱、建物など、形を認識します。ヒトの相貌を認識する領域も知られております。

 ヒューベルとウィーゼルの時代の視覚研究は、主に物の形を認識するといういわば黎明期の段階にありました。その後、研究が進んで、現在では、視覚認知とそれに伴って生起する運動や情動との関係、また、物の動きが空間的な認知とどう結び付くのか、あるいは触覚や痛覚などの体性感覚領野との間にどのような相互関連/干渉(inter-action)が見られるのか、別の言葉で言うと異種感覚との間に融合現象や可塑的な変化が認められるかどうか。研究が進展するにつれて、このように、認知機能について動的(dynamic)な研究が求められるようになりました。


図3 視覚系と聴覚系の情報伝達:サルの大脳皮質レベルの高次機能として、空間認知(where/how, 背側路)および物体認知(what, 腹側路)の大略2系列がある。


図4 視覚と聴覚の大脳皮質内における伝達経路を示す模式図。後連合野から前頭前野へ(少なくとも)背腹2つのルートがある。腹側路には物体認知に情動が加わり、背側路には視空間認知に音空間やグルーピングを含む音の情報が加わる。(Kawamura,2002)。

  視覚系の働きを示す脳内の流れの大筋が、模式図(図3 3左)に示されています。運動、形、色、空間認知など別々に情報が処理されます。ここが後連合野(posterior association cortex)、ここが前連合野(anterior association cortex)です。これらの領域で認知機能が行われます。認知の場合、形だけではなくて、色や動きや空間認知も含めますが、前頭前野(前連合野の別名)への入力経路として、背側ルート、腹側ルート(広義)という2つの強力な信号伝達ルート(図4)が、サルになると明らかに形成されてきます。ここで初めて空間認知、情動、思考、判断、美的感覚など、総合的、全体的に捉えるゲシュタルト(Gestalt)構成の認知機能が成立し、能動性・社会性・創造性が生まれると考えていいのではないでしょうか(詳しくは、川村(2006):「脳と精神」を参照)。

 次に聴覚系(図3 3右)の説明に入ります。この辺りが後連合野内の聴覚連合野で、音楽の和音、楽小節をまとめたフレージングが作られ、さらに、グルーピングを作ってメロディーの形を作るとされております。本当にそうでしょうか?その検証は、視覚系では、サルの脳に電極を刺したりして、皮質ニューロンの反応を調べることに成功しましたが、聴覚系では皮質レベルの研究は視覚系に比べて大分遅れております。

聴覚系で、このようなスキーマ(神経回路図式)ができたのはようやく前世紀の終わり頃です(Kaas ら,1999; KassとHackett、1999)。視覚系のヒューベルとウィーゼルの研究に比べて遅れること数十年のギャップがあります。今後、聴覚系で高次認知機能の問題をどう解析するかという研究が進展するでしょう。

 ところで、このように聴覚系と視覚系の認知・認識の流れを並べて図式化して見るとその機構がよく似ているように推量されます。簡単に説明しますと、聴覚経路でも、末梢の感覚器官からいくつかのニューロンを脳幹内で換えて大脳皮質の第一聴覚領、聴覚連合野に至り、そこから視覚経路と同じく、頭頂連合野および側頭連合野を経て、前頭葉に興奮が伝わります(Romanski ら、1999a,1999b)。

霊長類にみられる運動・情動・認知機能

前頭葉は大脳皮質の中でも最も高次の機能を司る所ですが、領域的にもいろいろな機能域に分かれておりまして、たとえば、その一つの運動性の言語に関係する領域は、ブローカー野(Broca area)と言われております。また、手足を動かす運動をする場合には、歯を磨くにも、ピアノを弾くにも、順序があります。詳細を省きますが、「高次運動(連合)野」が関係します(図5 、丹治、1999)。その指令・実行にあたって、初めは具体的な順序をいちいち考えますが、慣れてくると半ば自動的に運動系が走ります。


図5 「高次運動(連合)野」は運動を企画し、指令し、実行することに関与する。その部位と神経回路を示す。それには、運動前野(外側面6野)、補足運動野(内側面6野)、帯状皮質運動領が含まれる。(Tanji,1999)。

 また、情動機能や記憶に関わる扁桃体や海馬などを構成する辺縁系から大脳の後連合野へ、また一部前頭葉の眼窩面皮質へ情報の流れがあり、それからシナプスを換えて連合繊維を通って、前頭前野に至り、そこで周囲の状況に適応した適切な処理が行われます。

 当然のことですが、人間の脳に損傷を加えて実験をするようなことはできません。サルの脳内に、ある種の物質(アミノ酸同位元素やHRPなどの酵素)を注入して、その物質がニューロンの軸索内を流れてどこに終わるかということを調べることによって、神経繊維の結合状態を研究することが、1970年代から90年代にかけて盛んに行われました。私たちもネコやサルの大脳皮質における連合繊維の研究をしました(川村、1977, 参照)。

 後連合野で知覚認知されたいわゆる「受動的」な情報が、前頭葉内の前頭前野に伝達されて、状況に応じた高度の情報に変換されます。すなわち、ここで情報が組み替えられます。そこで行動の準備、順序、指令を経て一段と高い次元の運動形態にあたる「能動的」な行為が施行されるようになります。能動的な行為の中には、ゴルフの運動、ピアノの演奏から、さらに社会的な交流まで、つまり社会性の発揮まで含めることが可能です。ピアニスト、バイオリニストが楽譜に書かれた情報の順序に従って、メロディー、ピッチ、情緒表出などを含んで、作曲家の意図を汲んで演奏をします。このような脳機能(可塑的な性質を含めて、訓練による上達、創造性など)のベースはこの神経回路網内の活動にあります。

 ブローカー野のほかに、後連合野にもウェルニッケ野(Wernicke area)と呼ばれる、知覚性の言語野があります。また、後連合野と前頭前野の間には、これらを相互に(両方向性に)結ぶ(広義に拡張した概念の)背側経路(dorsal route)と腹側経路(ventral route)の2つのルートが存在します(図4)(前述)。

 一次運動野(4野)からは脳幹および脊髄に錐体路と総称される神経繊維束が投射していて、その活動によって運動が起こります。後連合野から知覚認知の情報は第一運動野に直接投射しないで、高次運動野と呼ばれる運動前野や補足運動野や帯状運動皮質という部位でシナプス替えというステップを踏み、そのプロセスの中で情報が処理されて、順序の定まった運動パタンが決定されます。

 ストリヒニン(スパイク)法を用いて、チンパンジーの皮質連合繊維を調べた研究(Bailey ら,1943a,1943b)があります。1930年代から40年代にかけて行われた研究です。ストリヒニンを皮質の小さな部位に塗布して刺激し、神経軸索の終末に観察される反応を記録することによって、皮質・皮質間の結合状態を調べるやり方です。これで一応、ネコ、サル、チンパンジーと所見が揃いました。それらを比較検討して、動物の所見を基に慎重に外挿することによって、ヒトの連合繊維の構築を肉眼解剖で得られた所見と照らし合わせて、恐らくこれに近いだろうと、苦心して、「仮想的」模式図を作成しました(図6)。ヒトでは、近年まで、肉眼所見以上の正確な知見が得られてなかったのですが、最近は、核磁気拡散テンソル画像(Magnetic Resonance Diffusion Tensor Imaging, MRDTI)法という白質(神経軸索束)の形成・発達の程度を濃度で表示して調べるというハイテク技術が使えるようになりました(Cataniら、2003; Kubickiら, 2002,および「脳と精神の医学」2009, Sept.特集を参照)。


図6 ヒトの大脳連合繊維の構築の模式図。アラビア算用数字はBrodmann の皮質区分域の番号。(川村、1977)。


図7 ヴァイオリンを演奏しているときの大脳皮質の活動を総合的に表現した図。運動、聞く、楽譜を見る、情動表現などの機能分担と統一した活動が一枚の絵のなかに見事に表現されている。(時実、1969)。

 この図7 は、我が国のニューロンサイエンス創始者の一人、時実利彦先生が描かれたものです(1969)。改めてこれを見て驚きますが、今から40年前に、大脳皮質の機能を総合的にとらえておられます。運動、聞く、楽譜を見る、情動の部位が互いに関係します。今ではEEG(electro-encephalography, 脳波)のほかに MEG (magneto-encephalography、脳磁図または磁気脳画像)、fMRI(functional magnetic resonance imaging,機能的核磁気共鳴映像診断装置),NIRS(near-infrared spectroscopy,近赤外線) などのハイテクを使った研究ができるようになりましたが、構成力でこの図に勝るものはないように思います。

 現在は、ヒトの脳に障害を与えない方法で、EEGやMEGやfMRIを組み合わせて調べて脳内活動を分析することが可能になりました。脳の活動状態の時空間的な変化を、もう一段と高い解像度の優れた測定機器でとらえて研究することができるようになりました。

サカナやトリにみられる認知・情動行為の観察

これまで、サルやヒトの認知・情動・運動関連の話をしてきましたが、トリやサカナではどうなのでしょうか? 次は、私が慶應大学にいたときに坪川達也先生がされた実験で(坪川, 2002; Tsubokawa ら、2009)、情動発現に関わる扁桃体の領域を、メダカで免疫組織学的(GAD,CGRP)に調べて(図8)、その対応する部位を同定しました。その扁桃体に電流を流して組織を破壊します。そして、そのときの行動変化を観察しました(図9,図10)。


図8 メダカとマウスの扁桃体の領域を免疫組織学的方法(暗褐色に染色された部分がGAD,CGRPの存在部位)を用いて、比較検討した結果推論し、同定した。(坪川、2002, 2009)。


図9 健常な扁桃体(上)をもつメダカの遊泳行動の軌跡。鏡のある面に寄ってくる(下)。集合解析の時間単位は「分」表示。


図10 両側の扁桃体組織が破壊(上)されたメダカの遊泳行動軌跡。鏡に映った姿に無関心である(下)。集合解析の時間単位は「分」表示。

 メダカを泳がせておいて、一つの面に鏡を置くと、健常なメダカは鏡に映った自分の映像を見て、同類の相手と「認識」して、「社会性」を発揮してか、鏡のほうに寄ってきます。その遊泳の軌跡です。しかし、扁桃体が破壊されたメダカは鏡を置いても近寄ってきません。行動パタンに変化が現れます。群れをなし、情を交わして何らかの交流/通信(波動を因とする電磁波や超音波や声などで)をするような、コミュニケーションを示す行動(そぶり)が現れません。

 発声器官をもたないサカナは歌うことができません。「メダカの学校は・・・」という小学唱歌がありますが、それがサカナからトリになると声を発するようになります。こちらはウグイスの歌です。人間の声とは発声器官も神経支配などの機構も、それに音色も違います。ヒトの歌声になりますと、倍音がよく響いて聞こえます(図11)。


図11 ウグイスの歌と人間と発声。発声器官もその神経支配も、それに音色も違う。左:ソノグラフ。右:ヒトの声帯の位置とトリの鳴管の位置。(岡ノ谷,2003)

 トリの発声の仕組みについて、慶應で一緒だった竹内京子先生のお仕事を次に紹介します。トリの場合には、気管支にある鳴管(syrinx)が発声器官で、舌下神経核支配です。ヒトの発声器官の声帯は咽頭にあり、舌咽神経と迷走神経に支配されております。竹内先生が留学された、フランスのル・ドワラン(Nicole M. Le Douarin)教授はウズラとニワトリの神経細胞の形態的差異について、顕微鏡下でクロマチン染色切片を調べるという、発生過程の研究法を考案しました(Tan -TakeuchiとLe Douarin, 1991)。

 トリの胚の初期、すなわち、7日や10日という時期に(将来、中枢神経組織に分化する)ウズラの神経管の一部を切り採ってヒヨコの胚の同じ部位に置き換えるという移植をして、キメラ動物を作ります。ウズラとニワトリ(ヒヨコ)の脳のキメラを作ります(図12)。そして、一部分ウズラの脳に置きかえて発育させます。そのときに鳴き声がどう変わるかということを調べました。最後に、脳の組織切片を作って顕微鏡観察をして部位を同定します。


図12 ウズラ胚の神経管組織の一部を部位と大きさを変えてヒヨコ胚の同じ部位に移植してキメラ動物を作る。斜線部が移植組織部。(Tan-Takeuchi とLeDouarin, 1991)


図13 ウズラとヒヨコの脳(胚の神経管の一部を交換移植)のキメラ動物。鳴き声がどう変わるか。斜線部は移植部で、その実験例の番号は鳴き声のグラフ(ソノグラフ)の番号と対応する。説明は本文参照。

 これは非常に難しい実験で、高度のテクニックを要します。ヒヨコの脳にウズラ脳を部分移植してキメラ脳を作製するという実験ですが、図13左下に表示した、②の前方の大脳だけの領域、③の大脳に加えて中脳と脳幹の先端まで含めた領域、④の大脳域を全く含めないで後方の脳幹だけの領域など、さまざまな範囲の脳組織部分のヒヨコ脳を切り取って除いた部分にウズラ脳を移植します。そしてキメラ動物の発する鳴き声を聞きます。ヒヨコの鳴き声は「チィーッ」と1回しか鳴きませんが、ウズラの雛は「チィーッ・チィーッ」と2回続けて鳴きます。図①のキメラ移植をしない場合には、鶏の鳴き声のままですが、③の移植をしますと、この二分割した「チィーッ・チィーッ」という鳴き声に変わります。そして、④になると、少し乱れてきます。なぜ乱れてくるかですが、④だと少し情動に関係する扁桃体領域が含まれています。③の移植例では(扁桃体を含んで)その領域が全部入っています(図13)(Balaban ら, 1988)。


図14 トリの高次発声センターと関連する聴覚系神経回路。説明は本文参照。

 この図14 はトリの聴覚系と発声機構についての概略図です。聴覚性感覚細胞からの刺激は脳幹を上行して→視床核(ov)→聴覚領(L-field)→HVC(高次発声センター、運動前野)へと伝達されます。トリが歌う時の発声に関する神経回路も研究されており、音を発する器官である鳴管までの神経路は、uvaから→NIf→HVC(高次発声センター)に至り、そこから→RA(運動野)→nuic(中脳)→XII(延髄にある舌下神経核) →さらに鳴管へという経路を通ります。これに加えて、歌を学び、それを記憶・学習することに関わる経路についても調べられていて、岡ノ谷先生(2003)からの受け売りですが責を取るために若干の修飾を加えております。その経路はかなり複雑です。すなわち、HVCを起点とすれば→Area X(大脳基底核に相当する、以下同じ)→DLM(視床核)→LMAN(帯状皮質)→RA(運動野)さらに→nuic→XIIへと下行します。この流れがこのように解明されているとすると(この領域に不案内故に全く驚嘆します!)ヒトにおける聴覚/発声の研究よりも進んでいることになりましょう。

 なお、この図では深さの明示がなく、大脳皮質の領域のように描かれております。たとえば、Area Xは深部にあるヒトの大脳基底核に対応するいわゆる「外套(線条体)」に相当する領域と推定されます。基底核の比較解剖ないし進化(と云えるほど考察できませんが)、とくにトリのこの領域に関しては、近年、新しい見方・概念が提唱されております(後述)。

 ここに運動野があります。その深部の近い所に扁桃体があります。情動の中枢と考えられる領域です。この部分を含んだ組織を移植してキメラ動物を作ったとき、ニワトリがウズラの鳴き声を発しました。ニワトリとウズラの歌い方のパタンが違うのですぐに分かります。その変化が扁桃体組織の移植による交換に関係するということがこの実験から推測されました。

扁桃体と海馬について(情動と記憶)


図15 扁桃体と海馬は共に大脳辺縁系に属する。海馬は終脳の半球内側面の翼板が肥厚することによって形成される。他方扁桃体は、半球胞の腹側壁が側脳室の内腔に隆起状に発達した神経節丘の一部から生じる。両者は発達の過程で移動し、互いに接近した位置関係を示すようになる。(川村,2007b)。

 扁桃体や海馬は大脳辺縁系に属します。出来上がった形では、海馬と扁桃体は側頭葉の内側に隣り合って位置しますが、発生学的な起源も出来方も構造も機能も違います(図15)。海馬は原始皮質(archicortex)と言って、古い皮質で外からは観察出来ません。外から見えるこの広い部分が新しい皮質領域です。また、内側面に新皮質と古皮質の中間に属する中古皮質(mesocortex, 帯状回)があります。


図16 サル扁桃体への入力(HRP法)。起始細胞を点で表し、その軸索終末部位(HRP注入部位)を斜線で表している。(Kawamura & Norita, 1980)。

サルでHRP法を用いて、扁桃体への入力繊維について調べたことがあります(Kawamura and Norita, 1980; Norita and Kawamura, 1980)。扁桃体には新しい部分と古い部分があります。新しい扁桃体の領域(外側核と外側核基底核)は、側頭葉や前頭葉の眼窩面の部分と相互に結び付いています。そして、この古い扁桃体の部分(内側核と中心核)は、脳幹のセロトニンやドーパミンやアドレナリンを産出する領域との結び付きがあります(図16)。


図17 皮質連合野から大脳辺縁系(海馬、帯状回など)への投射を示す図。サルとネコとの領域および量的比較に注意。(Kawamura, 1977)。

 外界からの入力が最終的に終脳(telencephalon)に到達し、そこで高次の認知機能がなされます。この新皮質に属する認知機能領域と、古い大脳辺縁系に属する情動機能領域とが、ネズミ、ネコ、サル、ヒトと動物の脳が「高次化」されるにつれて、ますます強く結び付くようになります。認知と情動は互いに情報を交換し合い、関連しています。つまり、最高の認知をつかさどる部位、すなわち、皮質連合野が発達したサル、さらに発達した人間になるに従って、ネズミやネコに比べて情動記憶に関わるとされる大脳辺縁系との相互関連がますます強くなります(図17)。


図18 「ペーペッツ(記憶)回路」と「ヤコブレフ(情動)回路」:「ペーペッツ回路」(海馬→脳弓→乳頭体→視床前核→帯状回後部→海馬傍回→海馬)は当初情動回路に属すると考えられていたが、現在は記憶回路に属すると判断され、情動回路と見做されるのは「ヤコブレフ回路」(扁桃体→視床MD核→帯状回前部→海馬傍回→扁桃体、加えるに、扁桃体→側頭・前頭皮質→帯状回)がこれに当たるというのが現在の通説である。(川村、2000 より引用)

この模式図(図18)は、1930年代から40年代にかけて発表され一世を風靡した、いわゆる「ペーペッツ回路(Papez circuit, 1937)」と「ヤコブレフ回路(Yakovlev circuit, 1947)」です。すなわち、扁桃体と視床と帯状回、前頭葉内側面を含む神経回路(サーキット)がこのように形成されることが明らかにされました。この頃から情動や記憶の概念が科学的研究の対象になってきました。


図19 海馬記憶系と扁桃体情動系とは、回路としては独立しているが、皮質、基底核、間脳において、相互に交流があり密接に関連する。石塚(2002)。


図20 海馬と扁桃体を含む大脳辺縁系の俯瞰図、神経回路(興奮の流れ)を模式図。(川村と小野、1987)。

 この海馬と扁桃体は、密接に関連しています。東京都神経研の石塚先生(2002)が両者の関連を図19 のようにまとめられました。図20 で神経回路を模式的にやや詳しく描きました(川村と小野、1987、の解説を参照されたい)。情動記憶や感情の動き、意欲やものの判断・評価は、個々人のこれまでの記憶体験によって変わってきます。その仕組みがここにあります。扁桃体からの情報は分界条(Stria terminalis)および腹側遠心路(ventral pathway)を通って視床下部に運ばれます。視床下部は内分泌系や自律神経系の最高中枢といわれる領域です。ここに大脳辺縁系、大脳皮質、基底核、視床などの領域間の相互の関連を示す模式図(図21)に示します(川村、2006)。


図21 大脳辺縁系、大脳皮質連合野、皮質下組織(大脳基底核や間脳)の相互関連を示す簡略化した神経回路図。知と情と意の絆は断ち難い。左:前方、上:外側面、下:内側面。(川村、2006)。


図22 哺乳類(a)、鳥類(b)、爬虫類(c)の海馬(四角で囲む)の構造比較。説明は本文参照。(Manns と Eichenbaum 2009)。


図23 ヒト(上)とラット(下)海馬(HPC)の比較(Kahle ら, 1986, 他から改変)。冠状断面(左)と右半球内側面(右)。全脳に占める海馬の大きさと位置、およびヒト背側海馬の退化に注意。

 次に、トリの海馬をみてみます。神経細胞の結び付きを詳しく調べてみれば、領域的に区分されていることが判明するのでしょうが、一見階層的な分化はしていないように見えます。ラットの海馬はこれで、トリの海馬と何が一番違うかというと、新皮質の場合にも言えることですが、ラットではこのように領域的にはっきり区分されていて、トリに比べると階層構造や区域化が明らかに進んでおります(図22 、Manns と Eichenbaum, 2009)。ラットの場合には、形も大きく、「背側海馬(dorsal hippocampus)」、「腹側海馬(ventral hippocampus)」に分かれます。一方ヒトの場合には、腹側海馬が大変よく発達しております。細胞構築などのプリンシプルはラットと同じですが、図23 のように外観上の違いは明らかです (Kahle ら, 1986)。

 私は、医学部を卒業してすぐに精神科教室に入りました。そこで6-7年間、患者さんと付き合って、鑑定医(現在の指定医)の免許と学位を頂きました。そしたら、「脳を勉強してこい」とObenに言われて脳の研究を本格的に始めました。数年して精神科に戻ってこようと思いましたが、「おまえを受け入れるポジションがない」というので、あきらめて、動物は文句を言わないから気楽だろうと思って実験を続けて、気が付いたら約40年間、神経科学の勉強を続けてきました。

 そして、今ようやく精神科医に戻ることができました。私のオスロ大学留学中の恩師のAlf Brodal教授が若い頃、Le Gros Clark 教授という有名なOxford 大学の先生のところで「The hippocampus and the sense of smell」という総説(1947)を書かれました。「海馬は、嗅覚に関係がある」と昔から言われてきましたが、下等動物ではそうだけれども、さらに進化した動物でもそうだろうか」ということを、約60年前に考察されました。今は、海馬の機能として情動や短期記憶がキーワードになっています。扁桃体、海馬は、大脳新皮質と結び付きがある他に、視床下部や大脳基底核との間にも相互に密接な連絡があり、大脳辺縁系の主役としての位置を確立しております。
海馬の病態像、認知症や精神疾患に認められる細胞脱落や萎縮などの所見、歯状回における細胞新生との関連などが、今やホットな課題となっております。

 ヒトでは、前にもチョット触れましたが、最高次の認知機能域に相当して、大脳皮質連合野内に3つの古典的言語野があることは有名です。便宜上、posterior、anterior、superiorの言語中枢という名称が付けられております。すなわち、一般にウェルニッケ野(感覚性言語領域)、ブローカー野(運動性言語領域)として知られており、それにsuperiorは、運動内側面皮質の前方域にあり、カナダの神経研究所のPenfieldグループ(1954, 1959)がみつけた言語野です。推測の域を出ませんが、意志決定とか情動に結びついた言語領域のように思われます。(昔、Jasper 先生にお聞きしたことがあります。)今では言語に関係する領域は脳画像法で調べられていて、上の古典的な領域に限らず、皮質内に多数存在すると考えられております。認知と情動との共同作用、すなわち、ロゴス(理性・言語)とパトス(感情・情緒・情動)の競演・統合(logopathos・pathologos)は今後の大きな研究課題であると言えましょう。

 言葉に文法があるように、音楽にも立派な文法(規則性)があります。この楽典が音楽の勉強の基礎になります。おそらく言葉と相同ないし類似の機能を共有する皮質領域があるのではないかと考えられます。この点、Sakaiら(2002)によって明らかにされたBroca領域近傍における言葉の文法/syntaxの研究は注目に値します。

 「はじめに言葉ありき」という聖句を行動派のドクトルFaust は好きなドイツ語に訳すことができませんでしたが、お勧めとして、近年「French author, Levi Strauss の “Music after Language”」という本が出版されているようです。ともかくも、科学的方法と視点に立った考察に従えば、有益な読み方が出来るのではないかと思います。

大脳基底核逍遥

 次に、大脳基底核(詳しくは、線条体―被殻と尾状核からなる背側線条体と側坐核の領域である腹側線条体とに分かれる―、および淡蒼球、視床下核、黒質から成る)に話題を移しましょう。図24 はトリとサルの脳の横断面の図で、この黒い部分が線条体です。一見して構造の違いは明らかです。今世紀の初めまで、鳥類では hyper-striatum (高線条体)、neo-striatum(新線条体)と言う名称が使われてきました。ここは爬虫類の背側脳室隆起/背側脳室周辺部(Dorsal Ventricular Ridge、DVR)といわれる脳室内に突出した原始(または原基primitive)的段階の構造をもった細胞の集団から発達した領域です。


図24 ハト(上)と赤毛ザル(下)の終脳の冠状断面図。線条体(striatum)の比較。


図25 動物(カエル、カメ、ハト、ラット)の線条体と背側脳室隆起/背側脳室周辺部Dorsal Ventricular Ridge、DVR)の進化的分岐/発散。説明は本文参照。(Reiner,2009)。

 DVR(図25 、Reiner, 2009)には視床からの感覚入力が多数認められ、この組織の起源については諸説紛紛です。すなわち、①哺乳類の大脳皮質と鳥類のDVRは共通の原基組織である爬虫類のDVR由来であるという説、②「未熟な神経管」の背側部が外套→大脳皮質へ、外側部が→DVRに発達したという説、最近では③DVRは哺乳類の皮質や基底核、さらに、一部は扁桃体や前障に相当するという説などがあります(渡辺、2001、参照)。

 2002年にアメリカのデューク大学にトリの研究者が集まって、striatum(線条体)ではなくてcortex(皮質)と呼ぼう。否、cortex というのは少し「格上げすぎ」だから、内部の構造を外から包み込むぐらいの意味合いのpallium(外套)にしておこうか(という話が出たかどうか知りませんが)ということで、この名前が使われるようになったのではないでしょうか? Duke大学で行われた会議の記録は、Reiner ら(2004)やJarvis ら(2005)の論文で読むことができます。

 サルとトリの線条体を比較して見ますと、当然かもしれませんが、外観が異なります。黒い部分が本来の線条体です。トリ(図24 上)ではそれを覆うかのように背側にDVRという名の、神経細胞群から「発達」して、神経核というネズミの皮質の一部に「対応」する機能をもつ集団が形成されたように考えられます。しかし、トリでは哺乳類の皮質にみられるような層状配列の構造は認められません。


図26 大脳基底核内の遺伝子発現(マーカーとして Dlx-2、Emx-1、Tbr-1、Pax-6、Nkx-2.1)を基準にした領域区分。説明は本文参照。Puelles (2001)。

 発生の過程における遺伝子発現の状況からみますと(図26)、このDlx-2はstriatumに限局して発現します。また、Emx-1は、cortex だけに発現します。そして、Tbr-1は、哺乳類ではcortexに、トリでは両方の領域に発現します。詳しくは原著(Puelles, 2001)にゆずりますが、ここでは3つの遺伝子発現を取りあげております。Pax-6, Nkx-2.1を含めて、数種類の遺伝子発現も調べられております。ここがDVR (背側脳室隆起)ですが、Tbr-1が明らかに発現しております。これをcortexと見るか、cortex に進化する前段階の領域とみるか、あるいはstriatumとしてみるかということです。決め手が出て合意に達するまでは、「学者さん」たち主張をしてなかなか譲りません。この分野で私は異邦人で自説を持ち合わせておりません。

 遺伝子発現(gene expression)を基準にして区域区分を決めるという、モダンな手法は、文句なく優れているように思われます。しかし、ともかくも、トリの「hyper-striatum、高線条体」ないし「lateral-pallium、外側外套」という名称などは、比較解剖学者にとってやっかいな曲者でしょう。昔、といってもつい最近の10年前までは、鳥類と哺乳類とを比較検討するときには、直接比較をすることをしないで、一旦爬虫類まで立ち帰って慎重に考察するようにと教わりました。遺伝子発現をベースにした研究でもDVRという原始的(primitive)な組織にまで戻って発生(進化)学的に考察せよということだと思います。

皮質→基底核→視床→皮質を含む神経回路

 大脳皮質と大脳基底核、視床、黒質を含む構造(図27 、Graybiel, 1997)や基底核と大脳皮質との間の並列的神経回路(図28 、川村、2007a,2009)は、昔から知られていました(Alexander ら、1986)。最近、Haber ら(2000)の形態学的研究によって、複数のニューラルサーキット(神経回路)に沿って、黒質⇔大脳基底核間の神経の興奮(の「やりとり」)が同時並列的に、そして経時的に進行する有様が示唆されるようになりました (図29) 。


図27 大脳基底核と大脳皮質、視床、黒質を含むブレーキ/アクセル(抑制と促進)のモデルといわれる模式図。上段(a)が直接路(アクセル)、中段(b)が間接路(ブレーキ)、下段(c)が両者によるバランスの保持機構を表わして、この回路の機構を説明している。(Graybiel, 1997,2000)。後年、この基本型に大脳皮質→視床下部の第3の高速路、ハイパー直接路が加わる(図30 を参照)。


図28 基底核と大脳皮質との間の並列的神経回路。大別して、①運動系、②連合系、③辺縁系のループがある。(川村、2007a 改変; Alexander ら, 1986、参照)


図29 黒質・大脳基底核間の神経の興奮が並列的に、そして螺旋(スパイラル)を描いて経時的に進行する。その形態的基盤が軸索流法によって示された(Haber ら、2000)。上段:大脳皮質、中段:大脳基底核、下段:黒質/腹側被蓋野。。

 この基底核障害は、神経科の外来でみられる異常運動疾患の症状の進行に際して観察されるばかりではなく、精神科の外来でもみられる症状です。麻薬が好きだという嗜癖の状態がだんだん強くなり、夜中でもそれを求めて落ち着かなくなり(Vergiftung,中毒症状)、いろんな精神症状が現れてきます。大脳基底核の一定の領域は、情動、認知、運動の領域へと移行し、それが同時並行的に、また並列的にも進行して行くことをうかがわせるに十分です。

 大脳皮質から基底核、それから視床にそして皮質に戻ってくる神経回路とそこにどのような神経伝達物質(興奮性のグルタミン酸と抑制性のGABA)が関与しているかをこの概略図(図30)に示しました。direct pathway(直接路)やindirect pathway(間接路)、そしてhyperdirect pathway(ハイパー直接路) (Nambu ら,2002)があります。そこに黒質緻密質(A9)と腹側被蓋野(A10)から、各々背側線条体および腹側線条体(側坐核)にドーパミン繊維が入って来ます。そのうちのA10→側坐核のドーパミン投射が引き金(トリガー)となって、この神経回路上を走る情動、認知、運動などの情報処理過程がダイナミックに、多重構造的に進行すると考えられます(図31)。


図30  大脳皮質・大脳基底核・視床・皮質と巡る神経回路(直接路:青、間接路:赤、ハイパー直接路:緑)と神経伝達物質(興奮性のグルタミン酸と抑制性のGABA)を示す概略図。(川村、2009)(図27を参照)。


図31 黒質、基底核、視床を含む、大脳皮質と皮質下の間に成立する並列回路が螺旋状に進行する様子を表した。黒質→側坐核というドーパミン投射がトリガーとなり、認知・情動・運動の情報を運ぶ複数の神経回路が連動してはたらき、動的に進行する。(川村、2009)。

 ここで、音楽/聴覚に関して付け加えるとすれば、中脳ドーパミン系のニューロンは、報酬期待性の聴覚性の刺激に対しても相動性(phasic)の発火(活動)を示すというデータが得られており、情動報酬の過程と接近行動の学習に関わっていることが知られております(Schultz ら、1997; Schultz,1998)。従いまして、線条体内に(視覚性のものと同様に)聴覚性記憶ニューロンも存在し、感情のこもったリズム感あふれる演奏などの行動/運動が強く影響されるものと推察されます。このように考えますと、ここにも音の表現に関わる何らかの機構が存在するように思われます。

以上のサーキットに小脳からの入力が加わる

 次に小脳をスタート・ポイントとして見たときの新旧の興奮伝達の流れと変化・移動について話題を移します。彦坂興秀先生のグループ(Sakaiら、1999)の実験結果を基にして私が作った図32 を示します(川村、2006)。初めに耳慣れない音のリズムを聞かせると、小脳半球の後葉が活動しますが、そのリズムに慣れてくると、あるいは「聞き慣れたリズムだな」と感じるようになると活動の中心が前葉に移り、何回も繰り返すと、この赤線で描いた流れのルートから青線のルートに移行します。このように、大脳皮質や大脳基底核の変化だけではなくて、不随意運動系に属する小脳の活動変化も入れて、それに脳幹、脊髄内の興奮伝達をも含めて認知機能/情動の処理/運動の自動的円滑統御などの統合に関係する(音楽の演奏の基盤を考えることにもなる)神経回路のスケッチ像を描いて脳内の情報伝達の全体像を図33 に試作してみました。


図32 認知→運動座標の変換ルートと脳内回路(興奮の流れ)の移行・変化について:①空間認知座標でコードされる、新奇刺激時のループ(小脳後葉→視床外側核群→後連合野→前頭前野→基底核前部→視床)から ②運動座標でコードされる、学習刺激に慣れた時のループ(小脳前葉→視床内側核群→補足運動野などの運動関連皮質→基底核中央部→視床)に移行する。①を赤線で、②を青線で描いた。(川村、2009)。


図33 認知・情動・運動の機能発現に関わる中枢神経系内の幹線回路を示す全体像。音楽を成立させる要素として、とくに演奏活動の際の奏者の脳内活動としても図からイメージできよう(川村、2009)。

 昔、といってもつい最近まで、私たち研究者は「この領域とこの部位が連絡しているから、機能的にはこうだろう」というように繊維連絡や電気生理の所見を基に考え、そして実験をして確かめて、解剖・生理学的に調べてきました。1960年代、70年代、ヒューベル、ウィーゼルたちが実験していた頃の初期の段階では、視覚系の感覚・認知の問題を静的に捉えておりました。現在は、このような段階から情動や運動と関連づけるという動的な変化を取り入れて、神経心理学と脳科学を結び付けて考察するという時代に入りつつあると思います。

 音楽は認知と運動と情動の3つの系が連動して活動した結果起こる高次神経(・精神)機能のひとつのaspect(現象形態)であると考えています。本稿では、認知系と運動系の考察に比重がやや傾いてしまったようです。しかしながら、音楽を含むすべての芸術活動において、重要な要因は、芸術作品に対する嗜好であり、それは脳のもつもう一つの側面である「感性」という言葉で表わされるものです。感性は各個人の作品に対する好き嫌いや理解力によって左右されますが、その脳内機構には本稿のテーマである情動回路が深く関与していることに疑いありません。残念なことに、芸術作品の評価を脳の言葉で説明できるほど現在の神経科学は進んでおりません。これに対して、同じ情動機能でも、味覚、嗅覚が深く関与する摂食調節の研究などは、近年飛躍的な進展を遂げております。その分野では、これまで曖昧であった摂食中枢や満腹中枢の本体をアミン、ペプチド、ホルモンのような摂食調節物質やそれらの受容体などの物質世界の言葉を用いて説明できるようになってきました。 現在はまだ、科学の目で見た時、不確定な存在である「音楽中枢」や「美術中枢」などが「摂食中枢」と同じように神経科学の言葉で語ることのできる日の到来を待ち望んでおります。 

 これで終わります。ご清聴ありがとうございました。

おわりに:まとめとしての補筆

 この地上に生きとし生けるものは自然の生態系の中に環(リング)として組み込まれており、自然(宇宙)から影響を与えられ、同時に影響を与えながら、自然のリズムに同調する。そして、それぞれのやり方で、生物は自然と交流する。ギリシャ語でpathos とよばれる、共感、感情の交わりは神経組織を発達させた動物界に明らかに認められ、広く生物界全体に認められるものである。動物界に限ってみても、系統樹の一方の先端の節足動物、しかもそのなかでも最も高度に進化した、頭部神経節をもつ昆虫の仲間には、マツムシやスズムシ(不幸なことに日本の古歌では各々の呼び名がしばしば逆転している)のようにオスでは、前翔に発音器官をもっている。その鳴き方は、左右の前翔を垂直に立てて、両翔を素早くずらせて合わせ目のところを左右に滑り合わせて音を発する。求愛を訴えたり、縄張りを主張したりして、コミュニケートする。因みに、(稀な例外を除いて)メスには発音器はない。メスはオスの発する音を聞き、オスの翔の付け根部分から分泌される匂いに誘き寄せられる。

 もう一方の系統樹系を辿ると、棘皮動物、原索動物と進化し、その先端に位置する脊椎動物に至る。群れを作り、相互認知する(情動表現をするであろう)サカナを経て、さらに上位に昇って、爬虫類(唸る、吠える)→鳥類(音声を発して歌う)→哺乳類(条件反射一次信号を理解する)へ、そしてヒト(二次信号系/言葉の成立)に至るまで、単純な発声器官から中枢神経系の発達に伴って、脊髄、脳幹、間脳、大脳辺縁系、皮質連合野というように、段階的に、階層を重ねて認知、運動、情動などの機能を精緻化・高度化してきた。 以下に、少し異なった視点から、要約すると、

Pathos;情動機構については、海馬、扁桃体、視床下部などを包括する大脳辺縁系について、その生物学的発達史をみれば、構造的にも機能的にもrefine されてきた。その一部を本稿でも取り上げた。

Logos;認知機能については、後連合野、前連合野(前頭前野)を軸とする機能で、大脳皮質の領域的、構造的発達、連合繊維を含む神経回路の発達も考察した。

 以上を発生学的視点に立って、動的に考察することによって、聴覚機能、情動、音楽、その空間的・時間的認識などなどの問題について、認知・情動・運動を不即不離のものと解して、その上に、理論を構築し、脳画像解析などの方法を用いて研究を進めることが可能になろう。そして意識と注意の問題を視野に入れて、それらを束にした現象を対象とする脳内信号処理の過程をイメージした研究を今後進めてみたい。

 本シンポジウムのシリーズは、このように情動の起源から説き起こして、音楽の成立に到るまでを視野に入れて企画されているようである。とすると、そこでは、和音、メロディー、ピッチなどの研究領域にも触れねばならないだろう。その解析は専門家におまかせするとして。皮質第一聴覚野(A1野)でこれらの原型が作られており、次のステップの連合野で視覚野や体性知覚野からの信号と出会って、その何処かで音と言葉とのスイッチングが如何なる風にか起こり、さらにrefine され統合されて音楽という芸術にまで昇華されるように思われる。その解析は専門家におまかせするとして。

 遠くない将来に、データに基づいて、トリ(さえずり)、イルカ(聴覚信号処理)、ゴリラ(ドラミングの旋律)、チンパンジー(微笑み、なん語)、そしてヒト(音楽への理解、図33)に到るまでの脳内機構/基盤を念頭に置きながら情動の起源と音楽的表現の多様性について考察することが可能となろう。


図34 音楽のいとなみ: ヒト脳内の知・情・意に関する情報処理の流れ。それぞれの領域および経路におけるはたらき(機能・活動)について説明を加えた。DL:背外側部、 VL: 腹外側部 。(川村、2007c)

 音楽の起源について考えるに当たって、自然の生態系の中に組み込まれて群れを作り、道具を使用し、言語(条件反射第二信号系)をコミュニケーションの手段として身に付けた賢い社会的動物としてのヒト、すなわちHomo sapiens(wise), Homo faber (work, labour)の存在をあらためて直視してみたい。そして一人の医師として、プリミティブなトリの音楽的調べからゴリラ/チンパンジーの躍動的な「ビート」へ、さらに収穫期の祭りの太鼓や笛の音の響きを自然の息吹の中で楽しむことのできる健常な、そして「自由」な人間としての活動に、そしてそこからの身体的・精神的偏移/ 逸脱(deviation)としての疾病を直視し、対処しながら、精神科医として治療の経験につなげていきたい。


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謝辞:

貴重なご意見を頂きました川野仁先生(東京都神経研究所)に感謝いたします。

また、この論文は、第3回「脳科学と芸術」シンポジウム: [音楽の起源と脳科学] における講演を掘り起こして頂いた原稿をもとに作成したものであり、生存科学研究所の許可を得て、以下の雑誌より転載した。

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最終更新日:2010年12月10日