P8-9 (神経解剖学、新見嘉兵衛著、朝倉書店:指定教科書)   (戻る

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図1-8 各種脊椎動物における終脳外套(点)と他の脳部(白)との比較。正中断(Edingerによる)。

 脳について各動物を比較すると、絶対値がヒトより著しく重いものにはクジラ(2000〜9200g)、象(4000〜4800g)などあるが、体重との比をとると、こららは必ずも大きい脳を持っているとはいえない。

次ぎに種々の動物の脳重およびそれと体重との比をあげる。

コイ 0.93g 1:860
カエル 0.095g 1:398
アオウミガメ 7.5g 1:10280
ハト 1.775g 1:116
スズメ 0.795g 1:26
ネズミ 0.376g 1:36
マッコウクジラ 8900g 1:3300
ウマ 448g 1:354
ゾウ 4660g 1:439
ネコ 32g 1:128
サル 80.5g 1:88
ゴリラ 450g 1:200
ヒト 1375g 1:41

 ヒトでは脳重は体重の1/40〜1/42であるが、人脳は必ずしも体重に対する比較脳重が最も大きいとはいえない。小鳥のなかには脳重が体重の1/12くらいのものあり、一般に小動物では体重に比し脳は重い。霊長類のうちではテナガザルの脳重は体重の1/28である。脳は保存または標本作製のため通常10%ホルマリン液で固定される。固定後3〜4日で重量増加の最大値(ほぼ10%)を示し、ついでこれに続く3カ月は変動がなく、1週間で20〜25%の重量減少を示し、ついでそのその減少率はしだいに緩慢となる。

 真の脳重を知ることは困難で、死因、死後測定までの時間、固定したときはその方法および期間などによって変動し、年齢、固定したときはその方法および期間などによって変動し、年齢、性別、人種などによっても異なる。新生児では脳重は成人の1/3.4くらい(男400g、女370g)で、6か月で出生時の2倍になり、2歳で約2.6倍、以後は少しずつ重量を増加し、7〜8歳で成人脳重の90%に達する。20歳から40歳で脳は最も重く、60歳を過ぎるとかなり軽くなる。日本人成人の脳重は男でほぼ1350〜1400g、女で1200〜1250gである。次に他の人種の脳重をあげる(括弧内は研究者)。

英(Clendinning) 男 1333g 女 1197g
仏(Parchappe) 1323g 1210g
独(Marchand) 1387g 1250g
露(Blosfeld) 1346g 1195g
スイス(Hoffmann) 1350g 1250g

 化石人類も頭蓋腔の容積から脳重を頭蓋腔容積はほぼゴリラと現代人の中間にあり、しかも新しい化石人類ほど現代人に近い頭蓋腔容積を有する。

 脳重と才能との相関関係は容易に決定できない問題であるが、いわゆる傑出人脳は一般の平均値より重い傾向にある。しかしすぐれた業績を残した人でも普通の脳重以下のことがある[Anatole France  (80歳)1017g].

桂 太郎(66歳) 1600g
三宅恒方(40歳) 1550g
浜口雄幸(62歳) 1495g
内村鑑三(70歳) 1470g
夏目漱石(50歳) 1425g
Turgenjeff(65歳) 2012g
Cuvier(63歳) 1861g
Bismarck(83歳) 1807g
Byron(36歳) 1807g
Kant(82歳) 1600g頭蓋腔より算出