赤い風船

川村光毅

孤独な少年の
心を捕らえた大きな夢
真実そのものの
無垢な赤い風船
それは少年が一度
掴んだ理想だ
時に少年から離れ
又つきまとう
赤い風船
そして理想

風船を追う少年の
心身を苦しめた
同輩たちの嘲弄
雑輩れんの冷笑
こけ蘇苔どもの邪魔
そして淋しくしぼんでゆく風船
ふみにじられた夢
少年が失意にみちて眺める
赤い風船
そして理想

じつと堪えている少年の
とび色の目は捕らえた
あらゆる世の中の風船が
どこからとなく
飛んできたのを
その赤黄白
緑青の大群と
一緒に高く
高く少年はのぼる
美しい理想を追って

楊柳、第2号、1957年、大学時代の作、誰か曲を付けて下さい。(電話:03-3353-1211)。