A,リンパ系の構造と特徴

(一)リンパ管道
(二)リンパ器官
(三)リンパ組織

(一)リンパ管道

1,Vas lymphocapillare(毛細リンパ管)Lymphatic capillary

 毛細血管と同様に単層の内皮細胞管で全身の組織中に網状をなして始まっている。その末端が盲状である。

2,Vasa lymphatica(リンパ管)Lymphatic vessels

 毛細リンパ管の合流により、やや太くなったもので、細小の静脈壁と似た構造をもっている。多くの弁をもち、弁は静脈にあるものと同じく内部の液の逆流を防ぐものである。

3,Trunci lymphatici(リンパ本幹)Lymphatic trunks

 全身のリンパ管は一定部位で所属リンパ節からのものが合して9本の本幹を作っている。a:左・右頸リンパ本幹、b:左・右鎖骨下行リンパ本幹、c:左・右器官枝縦隔リンパ本幹、d:左・右腰幹、e:腸幹が見られる。

4,胸管および右リンパ本幹

 9本のリンパ本幹はそれぞれ右リンパ本幹と胸管の2本のリンパ本幹を作る。

(1)Ductus thoracicus(胸管)Thoracic duct

 胸管は全長35-40cm,両側の右・左腰リンパ本幹および腸リンパ本幹が合して生じ、この部は第1-第2腰椎の高さで、拡大して乳び槽をなす。胸管は横隔膜の大動脈裂孔を通って胸腔中に入り、食道の後方を脊柱の右前方に沿って胸大動脈と奇静脈との間を上行し、第5胸椎の前面で左方にまがり、胸郭上口を出て、弓状をなして左静脈角に開口する。なお、胸管は静脈角に開口する前に左頸リンパ本幹、左鎖骨下リンパ本幹および左気管枝縦隔リンパ本幹を受ける。胸管は上述の6リンパ本幹によって両側の下肢、腹壁、骨盤壁、骨盤内臓、腹腔内臓のリンパを集め、さらに左上肢、頭および頸部の左側、胸部の左半、左肺、心臓左半からのリンパを集める。

(2)Ductus lymphaticus dexter [Ductus thoracicus dexter](右リンパ本管[右胸管])Right lymphatic duct [Right thoracic duct]

 右リンパ本幹は右鎖骨下リンパ本幹、右頸リンパ本幹および右気管枝縦隔リンパ本幹の合流から成立する約1cm程の短幹で、右静脈角に開口する。右上肢、頭および頸部の右側、胸部の右半、右肺、心臓右半および肝臓の大部分からリンパを集める。

(二)リンパ器官

 リンパ節、扁桃体、脾臓および胸腺がみられる。リンパ節はリンパ管の経過中に介在して、全身にひろく分布している。リンパ内の有害物質などをとらえる防御装置と考えられているほかに、ここで生産する新しいリンパ球の補給作用がある。圧平された球状リンパ節は圧平された球状ないし豌豆形の径約2-30mmの実質性臓器である。その凹側を門といい、2-3条の輸出リンパ管を出す。一方その凸側には数条の輸入リンパ管が流入し、一般に輸入リンパ管は輸出リンパ管よりも細い。

(三)リンパ組織

 リンパ組織はリンパ細胞および網状結合組織からなる。消化管および呼吸道の粘膜に分布する。

最終更新日:2010年12月20日