神経系は組織学的には無数の神経細胞「Neuron」と神経膠細胞「Neuroglia」とから成っている。
Ⅰ.ニューロン
神経細胞(ニューロン、神経元)とは、外胚葉性の神経細胞体と、そのすべて突起を含めた神経細胞全体のことをいう。また、神経系の興奮伝導の基本的構成要素である。
ニューロンは、神経機能をになう細胞としてシナプスにより相互に情報交換を行う機能単位でもある。ニューロンの多数の長い神経突起(軸索とも呼ばれ、長さがしばしば1mにも及ぶことがある)を介して情報の伝達を行っている。平行に走る多数の軸索が集まって神経となる。またニューロンには情報を受け取る短い突起(樹状突起)を有して、別のニューロンの軸索あるいは樹状突起との間にシナプスとよばれる接触構造をつくっている。また神経線維によって髄鞘をもつ時期が著しく異なり、早いもので胎生4ヶ月に末梢神経で始まり、最もおそいものは錐体路や皮質橋路で、これらは出生直前ではまだほとんど無髄で、生後2年でようやく髄鞘が完成する。
Ⅱ.グリア(神経膠細胞)
神経組織には、ニューロンの他に、ニューロンの支持、栄養などに与える主として外胚葉性のグリアと、中胚葉性の血管ならびのその周囲の少量の結合組織などがある。
有髄線維の興奮伝達速度は太い線維ほど速い傾向にあり、一般的に無髄線維よりも著しく速い。末梢ではSchwann細胞が髄鞘形成細胞である。
神経膠細胞には次の4種よりなる。
(1)上衣細胞ependymal cells:脳室や中心管の壁を構成する。
(2)星状膠細胞(astroglia or astrocytes):血管や軟膜の表面を覆う境界膜(glia limitans membrane )を形成し、突起の自由端は足突起と呼ばれる小さな球を作り、中枢神経を外界や血管から隔離し血液脳関門を形成する。したがって中枢神経系は星状膠細胞の細胞質に完全に囲まれた空間からなり、その中にニュ-ロンが外界や血管に直接することなく収っている。神経細胞へのエネルギーの供給の他に、脳の病態発生時には修復にも関与する。
(3)稀突起膠細胞(oligodendroglia):髄鞘形成細胞である。軸索のまわりを希突起膠細胞の細胞膜が規則正しく同心円状にラセン上に巻き込まれ薄膜の層構造を示す。神経組織は発生の比較的初期ではすべて無髄であるが、胎生の後期からしだいに髄鞘をもつようになる。これを髄鞘発生とか髄鞘形成という。白質以外にもニュ-ロン細胞体に接着している稀突起膠細胞もあるが、髄鞘形成以外の機能は不明である。
(4)小膠細胞(microglia):その機能はよくわかっていないが、脳内で免疫作用をおこなう可能性が示唆されている。各種液性因子を放出して脳の恒常性(ホメオスタシス)の維持に関与している。これまで小膠細胞は貪食作用があるといわれてきたが、それは血球由来の単球細胞であると最近証明されている。
最終更新日:2010年12月20日