一、脊髄の外景

 脊髄は脊柱管の中にある軟らかい白色の器官である。長い円柱状で、その太さはほぼ小指ほどである。長さ約40cm,太さは径1cm前後、上は環椎と後頭骨との境の高さで延髄に移行し、下は第1~2腰椎の高さで円錐状の脊髄円錐に終わっている。
 脊髄は体肢の発達のために頸部と腰部とで少し肥厚している。これをそれぞれ頸膨大および腰膨大という。
 脊髄はその前面の正中線を走る深い前正中裂と後面の正中線を走る浅い後正中溝おによって外観的に左右の両半に分かたれ、各半はさらに前外側溝、後外側溝という2条の浅溝によって前索、側索、後索の3索に区別されている。後索は頸部ではさらに薄束と楔状束とに分かれている。
 脊髄からはその全長に亘って脊髄神経が左右両側に向かって出ている。脊髄神経が脊髄から出るところは糸状の細かい神経が上下に並んでいて、この部を根という。脊髄神経根は前外側溝と後外側溝からそれぞれ1列になって出ているのであって、前者を前根、後者を後根という。これらの根はいく本かずつが1団をなして、それぞれ相当する椎間孔に向かって集まり、ついには前根と後根が合して一幹となり管外に出てゆく。後根は椎間孔の中に脊髄神経節を作っている。

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 脊髄硬膜は各脊髄神経に相当して円錐状に突出し、脊髄神経をさやのように包んでいる。末梢神経における神経上膜はこの硬膜の続きである。
 脊髄神経は31対ある。これをその相当する脊柱部にしたがってつぎの5群に分ける:
 「1」頸神経--8対
 「2」胸神経--12対
 「3」腰神経--5対
 「4」仙骨神経--5対
 「5」尾骨神経--1対

 ここで注意すべきは、頸神経と尾骨神経の数が頸椎と尾椎の数に一致していないことである。第1頸神経は頭蓋と第1頸椎との間から、第8頸神経は第7頸椎と胸椎の間から出るから、各頸神経の番号はその下の頸椎の番号に一致している。ところが、胸神経から仙骨神経まではそれぞれその上の椎骨の番号と同じである。尾骨神経はただ1対あるのみで、第1尾椎と第2尾椎の間から出る。
 脊髄を脊髄神経の出発部位に応じて頸髄・胸髄・腰髄・仙髄の4部に分ける。尾骨神経の出るところはとくに尾髄とは名付けず、仙髄に加えられている。

 脊髄の長さはすべに述べたように、脊柱よりもはるかに短いから、上記の各部は脊柱の各同名部と同じ高さに位するものではない。たとえば仙髄はほぼ第7胸椎から第1腰椎の高さにある。そのため脊髄神経は上部ではほぼ水平に外側の方に走って直ちに椎間孔を出るが、下るにしたがって次第に斜走し、腰髄や仙髄から出るものはみな並行して馬尾を作り、背椎管のなか(脊髄の周囲で硬膜腔内)を一定距離下行したのちに順次椎間孔をでて行く。脊髄の節段と脊柱の椎骨との関係については一般には、つぎのように計算している:

 C1~C4の脊髄は同序数の椎骨と対応する。
 C5~C8およびT1~T4の脊髄は同序数の椎骨より上方の一つ目の椎骨と対応する。
 T5~T8の脊髄は同序数の椎骨より上方の二つ目の椎骨と対応する。
 T9~T12の脊髄は同序数の椎骨より上方の三つ目の椎骨と対応する。
 L1~L5の脊髄は第11,12胸椎と対応する。
 仙髄と尾髄は第1腰椎と対応する。

 

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最終更新日:2010年12月20日