1,脳幹の外景

(1)腹側面

 延髄は脊髄の上端に続いており、橋はさらにその上方に続く部分である。延髄の腹側面には脊髄の前正中裂の上方への続きが見られる。この深い溝を境としてその両側に錐体という著しい高まりがある。このほぼ直角三角形の隆起の先端は下方にあってここに交叉する線維の集まりを見る、これを錐体交叉という。錐体の外側に卵円形の隆起がある、これをオリ-ブという。錐体とオリ-ブとの間に舌下神経溝がある。この溝は脊髄の前外側溝の続きである。この溝から舌下神経が外に出る。オリ-ブの後を境する溝をオリ-ブ後溝という、ここから舌咽神経、迷走神経、副神経が出入する。
 橋の腹側面は著しく膨隆している。ここに横走する線維が見られる。この線維は外側に向かって集合して橋腕(中小脳脚)を形成して小脳に入る。橋腕から三叉神経が外に出る。延髄と橋との境の溝において錐体の外側の境に当たり外転神経が外にでる。その外側でやはりこの溝から顔面神経、内耳神経が現れる。橋の腹側面の正中にある幅広い溝を脳底動脈溝という。
 中脳の腹側面には左右1対の大脳脚があって、お互いに70~80°をなして離開して視索の下を通過して大脳の内部に入る。左右の大脳脚の間にある三角形の深い凹みを脚間窩という。脚間窩の底は灰白質よりなり、多くの血管がここを貫いているために小孔がみられる。故に後有孔質という。大脳脚の内側面に動眼神経の根がでるために浅い溝がみられる。
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(2)背側面

 延髄および橋の背側面を見るとその大部分は菱形窩によって占められている。
 菱形窩は第四脳室の底にあたる。第四脳室の天井をなすものは小脳、前および後髄帆、第四脳室脈絡組織である。菱形窩を左右から境しているものは上部では結合腕(上小脳脚)、下部では索状体(下小脳脚)である。
 菱形窩の下端はややペン先を思わしめる形をなしているために筆尖とよばれる。正中溝に沿って窩のほとんど全長を走るかなり幅の広い高まりを内側隆起という。この高まりの中で菱形窩の下部にある部分は先端を下方に向けた直角三角形をなしている。これを舌下神経三角という。この三角の外側に先端を上方に向けた三角の凹みがある。この外側に幅の広い高まりがあって、この高まりは菱形窩の上部まで続く。これを前庭神経野という。前庭神経野の外側に聴結節という高まりが見られる。
 菱形窩の中部をみると聴結節から始まり横の方向に窩の面上を走る白い神経束がある。これを第4脳室髄条という。
 菱形窩の上部では内側隆起は髄条の上方で顔面神経丘という明らかな円形の高まりを作る。顔面神経丘の外側に青黒く見えるので青斑とよばれる。
 延髄の背側面の一部は菱形窩の内にあり、他の部分はその外にある。後正中溝の外側には薄束結節と楔状束結節がある。この二つの結節は上外側に向ってのびて互いに合して一つの高まりを作る。これが索状体(下小脳脚)である。
中脳の背側の部分を中脳蓋あるいは蓋板という。ここに上下左右1個ずつ、全体として4個の円形の隆起がある。四丘体という。その中で上方の二つを上丘、下方の二つを下丘という。下丘の後で前髄帆の先端の左右両側から滑車神経が外に出る。上丘および下丘から始まって前外側にのびる高まりがある。これをそれぞれ上丘腕と下丘腕という。前者は外側膝状体に、後者は内側膝状体に達する。

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(3)側面

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最終更新日:2010年12月20日