(二)Nuclei basales(大脳核)Basal nuclei

 これらが大脳半球のなかにある。大脳核にはつぎの4種を数える:

1,Nucleus caudatus(尾状核) Caudate nucleus

 線条体の表層をなす灰白質で、前下方に開いた鈎状をしている。側脳室の外側壁のなかをその弯曲に沿って走っており、その表層は自由表面をもって脳室内にふくれだしている。視床との間は分界条(間脳と終脳との境界線という意味)という溝で境されている。尾状核は部位により頭・体・尾に分けられる。

2,Nucleus lentiformis [lenticularis](レンズ核) Lentiform nucleus

 線条体の内部において尾状体と視床の外側にあるレンズ形の核で、その内側半を淡蒼球,外側半を被殻という。被殻は本来尾状核と同系のものである。その色調も同じであり、これを構成する神経細胞の形や大きさもよく似ており、また至るところで両者が灰白質の橋で続いている。すなわち系統発生学的には始めに一つの灰白質塊であったものが、内包の発達によって尾状核と被殻とに分けられたのである。それでこの両核を併せて線条体ということがあるが、その意味は上記の連絡の灰白質の橋が断面で多数の線条となって現れるからである。

3,Claustrum(前障)Claustrum

 レンズ核の外側に外包という薄い白質層を隔てて存在する薄い灰白板状の核で、ちょうど島の皮質の内側に相当して位置している。

4,Corpus amygdaloideum(扁桃体)Amygdaloid body [Amygdala]

 海馬旁回の内部において側脳室下角の前端に位置し、レンズ核のすぐ腹側に位置している大きい核である。
 これらの核の機能的意味については今日なお不明な点が多い。そのうちで比較的研究の進んでいるのは線条体および淡蒼球で、これらはいずれも錐体外路系(後述)の中継所をなし、骨格筋の運動および緊張を無意識的に支配している。それで、淡蒼球が傷害をうけると、筋の緊張が増してからだの運動が抑制され、線条体が侵されると、反対に筋の緊張がほぐれて舞踏病・アテト-ゼなどという疾病を引き起こす。線条体の機能は人や哺乳類では比較的ぼんやりして目立たないが、鳥類以下の下等脊髄動物では、また錐体路(後述)が発達していないので、この線条体が運動支配の最高中枢をなしている。
 扁桃体は嗅覚伝導路に関係を有し、嗅覚に対する反射運動を起こす中継所ではないかと考えられているが、そのほかにもいろいろの役割を演じているらしい。詳しいことは不明である。前障に至ってはまだほとんど何も分かっていない。

最終更新日:2010年12月20日