神経系の機能の本質は刺激を末梢から中枢に導き、興奮を中枢から末梢に伝えることにある。このように刺激と興奮が末梢から中枢に、あるいは中枢から末梢に達するには一般に数個の神経元を順次に経過するものであって、この神経元の連鎖を伝導路という。伝導路は神経系における内部機構なのであるから、神経系の機能を理解するためには、各伝導路の経過とたがいの連絡についての解剖学的関係をよく知っていることが必要である。
伝導路が神経機能の素地をなしている。したがって、神経機能の単純な動物では伝導路も簡単であり、人間のような高等動物では伝導路の数が増すと同時にその連絡が複雑になっているのは当然のことである。また伝導路は末梢神経のなかでは簡単な経過を示し、かつ一般にたがいの連絡が存在しないが、中枢神経系の中では極めて複雑でほとんどあらゆる可能性において連絡しており、いわば網状を呈している。しかしこの網状の走向は決して無秩序なものではなく、中枢神経系のなかには多数の神経細胞体の集団(核および皮質)があって、各伝導路はこれらの灰白質の間をたがいに連絡している。すなわち核や皮質はちょうど電話網における交換局に相当するものであって、一つの伝導路は末梢と脳の皮質とを連ねるほかに、途中に介在する核において他の経路へも連絡しているのである。
伝導路の数は極めて多く、その経路は非常に複雑である。のみならず今日なお未知のものも多い。それで本書では最も重要なものだけを取り上げることとし、理解を容易にするため、なるべく模式化して述べてゆきたいと思う。
伝導路を大別すると、〔1〕求心性伝導路〔2〕遠心性伝導路〔3〕反射路の3種となる。このうち〔1〕は末梢の知覚装置あるいは感覚器官から始まって大脳や小脳の皮質に至るもので、すなわち上行性の経路であり、〔2〕は大脳皮質またはその他の運動ないし分泌の中枢から起こって末梢の終末器官すなわち筋または腺に至もので、したがって下行性の経路である。これに反して〔3〕は〔1〕と〔2〕とをその経過の途中で連ねているもので、大脳皮質を通らない。しかし先に述べたように、伝導路は中枢神経系のなかで網のように張りめぐらされており、なかには上の3種のうちのいずれに入れるべきかに困るようなものもないではない。また知覚性のものは必ず上行性、運動性のものは必ず下行性とは限らない。理解を助けるためにまず反射路から述べることにする。
脊髄神経の知覚線維は後根を経て脊髄の中に入り、その本幹は後索のなかを延髄に向かって上行し、さらに大脳皮質にまで達しているが、その経過中に脊髄の中で多数の側副枝を出して運動性伝導路に連絡している。このようにして大脳皮質を通らない知覚→中枢→運動という伝導路が構成されているのであって、このような経路を反射路または反射弓という。反射弓につぎの2種を区別す。
後根細胞の神経突起の側副枝が直接に前根細胞に連絡して生じる反射弓で僅かに2個の神経元からできているに過ぎない。
後角細胞と前角細胞との間に1個から数個の索細胞が介在しているもので、したがって3個以上の神経元の連鎖からなっている。
索細胞の細胞体はもちろん灰白質の中にあるが、その神経突起は一度灰白質の外に出て上行または下行し、再び灰白質の中に入るのである。脊髄白質の深層すなわち灰白質の周囲の部分はこのような索細胞の線維によって占められている。
脳神経もまた脊髄神経と同様に反射弓の構成にあずかっている。その直接反射弓は主として延髄・橋・中脳などの脳幹内に限られているが、間接反射弓は脊髄神経との間にも作られている。
直接反射弓は主として同側性で、しかも小範囲の反射運動(たとえば種種の腱反射)を行なうにすぎないが、間接反射弓はそれよりも複雑で広範囲な運動を行なう。反射の意味を広く解釈するならば、後述の小脳を経過する上行性および下行性伝導路をはじめ、錐体外路性運動経路なども一種の関節反射弓と考えてさしつかえない。
平滑筋への運動路および腺への分泌路もまた大脳皮質とは直接に連絡がないから、これらも反射弓の下行脚にほかならないが、これらは自律神経に所属するものであるから、項を改めて後述することにする。
求心性伝導路を上行伝導路ともいい、末梢からの刺激を中枢に導く経路の総称である。これをさらに知覚・味覚・嗅覚・視覚・聴覚・平衡覚などの伝導路に分ける。
主として皮膚と粘膜からの刺激(触覚・圧覚・痛覚・温覚・冷覚など)と筋・腱・関節などからのいわゆる深部知覚とを大脳皮質へ導くものである。この際注意すべきは、これらの基本知覚はそれぞれの路を通るのではないことである。末梢神経内の知覚線維は脊髄神経節の後根細胞の樹状突起であるから、途中で中断されることなく脊髄神経節に入る。脊髄神経節から出る線維(後根細胞の神経突起)は脊髄神経の後根を通って脊髄に進入し、ここでつぎのような三つの系統に分かれる。
A.脊髄に入った線維はT状に上下に分かれ、それぞれ多数の側副枝を出して脊髄のなかを下行または上行する。下行するものは束をなして後索のなかを下行し、次第に後柱に終わる。これは後根線維を下位の体節の運動神経元と連絡させ、広汎な反射運動を起こさせるためのものである。上行するものはもっぱら後索の中を走り(下半身からの線維は楔状束を作る)、後索の上端にある薄束核と楔状束核に終わる。以上が第1神経元の範囲で、これを脊髄延髄路という。薄束核と楔状束核の神経細胞から発する線維は、延髄のなかで内弓状線維となって正中部に向かって走り、さらに正中線をこえて反対側にいたり(毛帯交叉)、脳幹のなかを上行して視床に終わる。これを延髄視床路といい、第2神経元の神経突起の束からできている。それらの線維は第4脳室の腹側部および中脳水道の外腹側部で比較的よくまとまった強大な束を作っており、これを内側毛帯という。視床の神経細胞(第3神経元)から出る線維は内包を通過して大脳皮質の体知覚領へ行っている。これを視床皮質路という。
人における臨床的観察の結果、この経路には高級な触覚と深部知覚とが通ることが明らかにされている。なおこの経路の一部は延髄のなかで薄束核および楔状束核から分かれ、同側および反対側の下小脳脚を通って小脳に行っている。
B.後根を経て脊髄に入った知覚線維の一部は脊髄後柱の索細胞に終わり、索細胞(第2神経元)から出る線維は直ちに反対側に渡って側索の表層を上行し、内側毛帯の背外側に接して走り、視床に終わる。これを脊髄視床路という。脊髄視床路は皮膚や粘膜の痛覚・温覚・冷覚ならびに下級な触覚を伝えるもので、視床核からさらに第3神経元が始まり、その神経突起は前述の視床皮質路の一部となって内包を通って大脳皮質の知覚領に達する。
知覚性脳神経の伝達路も脊髄神経とほぼ同様の経過を示している。すなわち末梢から来る知覚線維は各脳神経所属の知覚神経節(三叉神経では三叉神経節、顔面神経では膝神経節、「内耳神経は別に述べる、」舌咽神経では上神経節と下神経節、迷走神経では上神経節と下神経節でこれらはいずれも脊髄神経節に相当する)に入り、その神経細胞から発する線維「神経突起」は橋または延髄に入ってそれぞれ所属の核に終わる。それゆえ、これらの知覚性脳神経の核を知覚核または終止核といい、およそ脊髄灰白質の後柱の一部と薄束核・楔状束核に相当すると考えてよい。これらの終止核の細胞「第2神経元の細胞」の神経突起は直ちに交叉して反対側に渡り、脊髄・延髄から上がって来る内側毛帯に加わり、結局視床を経て大脳皮質に行っている。
以上述べたところからわかるように、知覚伝導路は大脳皮質に達するまでには
1]何れも3個の神経元からなり、
2]脊髄または脳幹で必ず一度交叉し、
3]内包を通過しているのである。
脊髄後根の知覚線維が脊髄に入ったのちT状に分かれて一部が下行することは上に述べたが、このような関係は知覚性脳神経にも認められる。それらの下行性線維はそれぞれまとまった束(たとえば三叉神経脊髄路・孤束)となって下の方にくだり、やがて索細胞に終わり、やはり反射弓の構成にあずかっている。これらの脳神経に所属する索細胞はそれぞれ集まって核をなしている。三叉神経脊髄路核、孤束核などがそれである。
C,脊髄神経後根の線維は脊髄に入ったのち、その側副枝の一部は同側の脊髄灰白質内の索細胞(胸髄核および前柱と後柱との移行部)に終わり、この索細胞の神経突起は再び同側(一部は反対側の側索の表層)を束をなして上行する。その一半は側索表層の後部を占め、延髄から下小脳脚(索状体)を通って小脳虫部の皮質に終わっていて、これを後脊髄小脳路という。他の半分は脊髄の横断面上では後脊髄小脳路の前に接して走っており、橋の上端の高さまで登って急に後方に折り返り、上小脳脚(結合腕)を通ってこれも小脳虫部の皮質に終わっている。これを前脊髄小脳路という。
これらの両経路はいずれも2個の神経元からなっており、交叉することなく同側性に走っている(ただし前脊髄小脳路の線維は脊髄内で一部交叉しているという)。小脳皮質からの先の連絡は主として後述の小脳と中脳、中脳と脊髄とを結ぶ経路すなわち錐体外路によって再び脊髄の前角細胞へ戻ってくるのであって、大脳皮質へは通じていない。こんなわけで脊髄小脳路は一種の広範囲な反射経路の一部をなすもので、筋や腱や関節からの深部知覚を導くものであり、この経路を通る刺激は意識にはのぼらない。
平衡覚を司る末梢器官は内耳の半規管と前庭である。これらから発する神経線維は内耳神経の一部である前庭神経を作って脳幹に入る。この第1神経元の神経細胞体が内耳のなかで前庭神経節を作っていることは既述の通りである。第2神経元は菱形窩底の外側部にある前庭神経核の細胞から始まり、一部は小脳に行き、ほかは後述の前庭脊髄路として下行している。 このように、平衡覚の伝導路は上行性のものでありながら、大脳皮質との関係が薄いところにその特徴がある。このことは、平衡覚そのものがわれわれの意識にのぼることの少ない点からしてもうなずかれる。すなわち、その形態要素の大部分は反射弓の形成に関与しているのであって、上記の前庭脊髄路は後述のように重要な下行性伝導路として脊髄の前角細胞に連絡しており、また小脳に行く経路も結局は小脳を介して下行性伝導路に連絡するものである。
内耳の蝸牛から発する神経線維はラセン神経節を作ってのちに集まって蝸牛神経となり、脳幹に入って菱形窩底の外側部にある蝸牛神経核に終わっている。これから出る第2神経元の線維は菱形窩底のなかで交叉し、反対側を上行して中脳蓋の下丘に終わる。下丘から発する線維束は同側の視床の内側膝状体核に終わる。これから発する第3神経元の線維は内包を通って大脳皮質の聴覚領に放散している。聴覚伝導路は中脳のなかでは内側毛帯の背外側部に比較的密集した束を作っている。この束を外側毛帯という。
この経路もその経過中にいくつかの運動性脳神経核(ことに眼球運動を支配する神経核)と連絡し、反射弓を作っている。
以上述べた上行性伝導路は、いずれも形態学的には知覚伝導路と相同のものであるが、視覚伝導路は本来大脳内部の伝導路と見なすべきであって、その経過や神経元の構成も全く前者とは趣きを異にしている。
網膜における杆状体と錐状体が視覚伝導路の第1神経元の細胞であり、第2および第3神経元も網膜内にあることは、後に視覚器の項で述べる通りである。および第3神経元も網膜内にあることは、後に視覚器の項で述べる通りである。第3神経元の神経突起は眼球後極に集まって視神経となって眼球を出してゆく。視神経は視神経交叉のところでいわゆる半交叉を行って視索となり、外側膝状体、視床枕および中脳蓋の上丘に終わる。外側膝状体から発する第4神経元は内包を通って大脳皮質の視覚中枢に放散している。視床枕および中脳蓋上丘に終わるものは反射路の形成に関与しているだけで、視覚領との連絡はない。
半交叉というのは眼球網膜の内側半から発する線維のみが交叉し、外側半から来る線維は交叉しない状態をいう。ゆえに、もし右の視神経が切断されると、右の眼から来る刺激の伝導は中断されるから、ちょうど右眼を閉じた場合と同様の視覚障害が起こるが、視神経交叉よりも中枢部たとえば右の視索が切断されると、両眼の網膜の右側半からの伝導が遮断されるから、左右の眼とも視野の左半が消える。
視索伝導路にも一つの重要な反射弓が付属している。これは上丘において接続しているもので、運動性の脳神経核に行くとともに、脊髄の前柱にも終わっているから、視蓋延髄路および視蓋脊髄路と呼ばれる。その詳細は下行性伝導路のところで述べる。
これはきわめて複雑な多数の経路から成っており、またその中枢部にはまだ不明の点も多いから、その概略を記するに留めたい。臨床的にも重要性は少ない。すでに嗅覚器の項で述べた通り、嗅覚伝導路の第1神経元をなすものは、鼻腔の粘膜上皮の嗅細胞そのものである。嗅細胞の神経突起は嗅神経となって篩板を貫き、嗅球に入り、このなかで第2神経元すなわち僧帽細胞の樹状突起と連絡している。この連絡部は各神経元が一つずつの球状体を作っていて、これを嗅糸球体という。僧帽細胞の神経突起は嗅索のなかを後走して嗅野およびその付近に終わり、それから種種の路を通って結局海馬旁回にいたり、その嗅覚領に終わる。このほか嗅覚路の一部は嗅覚領を経由することなく、嗅索から直接に中脳の網様体に行き、また一部は海馬傍回→脳弓→乳頭体→視床を経て同じく中脳の毛様体に行っている。これらの経路はさらに下行性の網様体脊髄路を経て、運動性脳神経の起始核や脊髄神経の前角細胞へと連絡しているから、これによって嗅覚に対する諸諸の横紋筋の反射運動が起こりうるわけである。
乳頭体から視床にゆく線維は第3脳室の側壁のなかで著明な束を作っている。これは肉眼的にも剖出できるもので、乳頭視床束という。
遠心性伝導路をまた下行性伝導路ともいう。中枢の興奮を末梢に伝えるもので、運動伝導路と分泌伝導路とからなっている。運動伝導路はさらに随意筋に行くものと不随意筋に行くものとに区別されるが、後者と分泌伝導路とは自律神経系に属するものであるから、一般の慣例にしたがってあとで別個に取り扱うこととし、ここでは随意筋にゆく経路についてのみ述べる。
大脳皮質の運動領から発し、脳神経ないし脊髄神経を経て骨格筋その他の横紋筋に至る経路である。随意運動はこの経路を通って行われるものであるから、これは以下述べる多数の運動伝導路のうちでも最も重要なものである。しかし系統発生学的にみると、この経路は哺乳類において始めて現れた新しい形態である。
錐体路の起始は大脳皮質の運動領「中心前回」にある神経細胞で、これから発する線維は内包、大脳脚、橋縦束を経て延髄の錐体に達する(錐体路の名はここに由来する)。ここでその大部分は交叉(錐体交叉)して反対側の脊髄側索のなかを下がって順次脊髄前柱の前角細胞に終わり(錐体側索路)、交叉しない残りの線維は同側の脊髄前索のなかを下りつつ順次に交叉し、すぐに反対側の前角細胞に終わる(錐体前索路)。次に脊髄の前角細胞から始まる線維は前根を通って脊髄神経のなかに入り、途中で中断することなく末梢に及んで随意筋に分布する。
なお錐体路の線維の一部は脳幹の中脳、橋、延髄にある両側の運動性脳神経核に終わる。すなわち、一側の皮質運動中枢からの線維は同時に両側の脳神経運動核に接続する。これから発する線維はそれぞれの運動性脳神経となって、その支配する随意筋に行っている。ただし、口と頬の表情筋を支配する顔面神経核の下部と、舌下神経核とは例外で、それぞれ対側の皮質から支配されるにとどまる。
このように錐体路はすべて2個の神経元から成ること、および必ず一度交叉して反対側の随意筋にゆくことがその特徴である。二つの神経元はそれぞれ上、下の神経元という。
錐体路の第1神経元は大脳皮質から始まって脊髄または脳幹にゆくのであるから、また前者を皮質脊髄路といい、後者を皮質延髄路という。
大脳の前頭葉・頭頂葉・後頭葉・側頭葉の皮質神経細胞から発する神経突起はそれぞれ強大な線維束をつくって内包に集まり、さらに大脳脚を通って橋に入り、ここで橋核に終わる。以上が第1神経元で、これを皮質橋路という。橋核細胞の神経突起は橋のなかを横走して大部分が反対側に渡り、中小脳脚(橋腕)となって小脳髄質のなかに進入し、放散して小脳半球の皮質の顆粒細胞に終わる。以上が第2神経元で、これを橋(核)小脳路という。顆粒細胞の神経突起は平行線維と呼ばれ、プルキンエ細胞の樹状突起に終わる。この小脳皮質細胞(プルキンエ細胞)の神経突起は歯状核で中継されて上小脳脚(結合腕)のなかに入り、交叉して主として反対側の赤核に終わる。赤核から発する新たな神経線維は中心被蓋路「赤核オリーブ路」となって同側のオリーブ核に終わる。オリーブ核からは交叉性に下小脳脚(索状体)を通って小脳皮質の全域とすべての小脳核に(登上)線維を送っている。上記の伝導路は小脳の運動調節作用を筋系に伝達するものと考えられる。
大脳前頭葉の皮質の運動性神経細胞から出る神経線維は同側線条体、ついで淡蒼球にはいってそれぞれ中継される。淡蒼球から出る線維は一部は直接に、一部は視床下核と黒質で中継され、同側および反対側の赤核およびその付近の網様体に終わる。つぎに、赤核からの興奮は前述の中心被蓋路を通り、下オリーブ核いたる。なお赤核から下降する線維の一部は脳幹の網様体にも終わっている(そのさきは網様体脊髄路となって脊髄に下る)。この経路は筋の緊張・不随意運動などに関係するものと考えられている。従って大脳皮質との連絡はあまり強くない。前にのべた通り、鳥類以下の動物では錐体路がなく、この経路が運動伝導路のうちで最も重要な地位を占めている。
(四)Tractus tectospinalis(視蓋脊髄路)Tectospinal tract
中脳蓋の上丘(視蓋)から発し、その大部分は交叉し、一部は交叉せずに脊髄前索の中(前正中裂に面した表層部)を下行し、線維の終末は順次前角細胞の終わる、上丘は既述の通り視覚経路その他多数の求心性経路と連絡があるから、視蓋脊髄路はいわゆる視覚反射その他の反射弓の遠心路をなすものである。すなわち、たとえば体に危険を及ぼすような外界の状況が目に映じたときに、これに対して反射的に防衛的また逃避的の運動を起こしたり、あるいは視覚によって身体の平衡を調節するものと考えられる。
(五)Tractus vestibulospinalis(前庭脊髄路)Vestibulospinal tract
延髄の外側前庭神経核から発する線維束で、末端はやはり前角細胞の連絡している。すなわち、上記の核の神経細胞から出る神経突起は同側性に下行して脊髄に入り、前索のなかを錐体路の前に沿って走っている。この伝導路は前庭神経とともに反射弓を作っているのであって、身体の姿勢の反射的に正しく保つ作用をもつものと見られる。
最終更新日:2010年12月20日