第一章 Osteologia(骨学)Osteology

一、骨の分類
二、骨の構造

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 これまでの解剖学用語では骨、骨格系(Ossa; Systema skeletale)に相当するものをこれまで骨学(Osterlogia)と呼んでいた。 からだの支柱をなす「骨ぐみ」である。多数の「骨」といくらかの「軟骨」がその構成単位をなす器官であり、これらが多くは関節によって可動的に連結されている。

 骨格には昆虫や甲殻類に見られるような外骨格と、脊柱動物にみられるような内骨格とがある。内骨格の構成単位をなすものは骨という器官で、人体では骨の数は200あまりである。しかし、頭蓋の上部をつくる骨、顔面の骨の大部分、上肢帯の鎖骨は、本来は外骨格性の皮骨が動物の発達の過程で沈下して、内骨格の一部となったものと考えられている。これらの皮骨性の骨は、その形成から見て、その主要部が結合組織からすぐ骨組織がつくられたもの(結合組織骨、膜骨)であって、内骨格性の骨が先に軟骨性の原基を経て骨になる(原始骨、置換骨)のとは区別される。

 骨組織や軟骨組織は身体の支柱であり、筋とともに身体各部の運動を引き起こす。この支柱を骨格系といい、骨格系と関節系、および骨格筋を合わせて運動器という。また、頭蓋や脊柱はなかに中枢神経組織(脳と脊髄)を入れて、それを保護し、胸郭や、骨盤は内蔵の一部を入れて保護する。骨格系はカルシウムやリンなどの重要な鉱質の貯蔵庫でもある。身体の多くの器官が正しく機能するためにはカルシウムが必要で、血液と骨組織の間で絶えずカルシウムの交換が行われている。また、骨の内部は血液細胞の産生の場である。

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 人の骨は約200個あり、その形により次のように分類される。

1,Os longum(長骨)Long bone

 長骨は管状骨ともいう、上腕骨や大腿骨のように長い骨で、長い管状の骨幹の両端に膨らんだ骨端がある。表面から見ると長骨は緻密な骨(緻密質)から出来ているように見えるが、その内部は疎な構造物(海綿質)になっていいて、骨髄が入っている。骨端の表層は緻密質につづく薄い皮質で、内部は薄い骨質が交差した海綿質からなる。骨幹と骨端の間に骨端軟骨があり、大人になってそれが骨化して骨端線として残る。

2,Os breve(短骨)Short bone

 短骨は足根骨や手根骨のような立方形ないし積み木状短い骨をいう。その緻密質は長骨より薄く、明瞭な境界なしに海綿質に移行している。

3,Os planum(扁平骨)Flat bone

 扁平骨は扁平な骨である。2層の硬い緻密質に挟まれて、薄い海綿質が存在する。頭蓋骨のほかに、胸骨、肋骨、肩甲骨、腸骨などが扁平骨に属する。扁平な頭蓋骨では緻密骨は外板と内板にあたるその間に海綿質に相当する板間層がある。

4,Os irregulare(不規則骨、不規則形骨)Irregular bone

 不規則骨は形が不規則で椎骨や下顎骨などの顔面頭蓋の多くの骨が属する。

5,Ossa pneumatica(含気骨)Pneumatic bones

重量を軽減するため、頭蓋骨の一部の骨には空気が入る副鼻腔があり、内面は粘膜で覆われている。このような骨を含気骨といい前頭骨、篩骨、蝶形骨、上顎骨などがある。鳥類ではとくに含気骨が発達している。

6、Ossa sesamoideum(種子骨)Sesamoid bone

 種子骨は腱あるいは腱と癒着している関節包に出現する骨片であるが、骨化の程度はまちまちで大部分が線維軟骨性の場合もある。摩擦に抵抗するために生じた物で、その腱が接している骨部と関節する。手、足の腱に多くみらえるが、膝蓋骨は靱帯の人体中最大の種子骨である。一般に腱が骨の突起などの直上を通り、しかも頻繁に移動する部位に生じ、摩擦を防ぐ働きがある。関節部などで、骨に接して通過する腱の中に生じた骨片で、その骨と関節して摩擦に抵抗する。骨化の程度はまちままちで大部分が線維軟骨性のこともある。関節面は関節軟骨におおわれる。母指の中手指節関節部など手・足に多くみられ、豆状骨、膝蓋骨も種子骨である。

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 骨は骨質・骨膜・骨髄および神経・血管などから構成されている。

1,骨質

 骨組織からなり、緻密質と海綿質に分けられる。緻密質は骨の表面にあり、海綿質は内部に見られる。管状骨では骨幹は厚い緻密質からなり、骨端は海綿質で、その表層だけが薄い緻密質の層で構成されている。

2,Periosteum(骨膜)Periost

 骨の表面に癒着してこれを包む薄い膜で、組織学的には交織結合組織でできている。骨の関節面には骨膜はない。骨膜は線維層と細胞層すなわち骨形成層とからなる。数多くの血管やリンパ管ならびに神経が骨膜に見られる。

 骨膜は青春期にいたるまでは骨の表層に骨質が新生することによって骨の太さの成長を営んでいる。成人においても、骨折あるいは手術で骨が損傷を受けると、骨膜は若がえって再び造骨機能を取りもどし、骨質の新生を行なう。

 骨膜と骨質の結合は強力である。それは骨膜の結合組織線維が骨膜の中に進入しているからである。それはシャ-ピ-線維といわれる。それゆえ骨膜はまた筋と骨との結合の媒介をも営んでいる。

 骨膜には豊富な血管と神経があり、骨の栄養と感覚を営んでいる。

3,Medulla ossium(骨髓)Bone marrow

 海綿質の骨柱の間の小腔と管状骨の髓腔とを満たしている細網組織である。骨髓は造血作用を営んでいるものは赤い色を呈しているので赤色骨髓といい、それを失ったものは黄色をしているので黄色骨髓という。
 長骨の骨端、短骨、扁平骨と不規則骨の骨髓は一生涯赤色骨髓であるが、他の骨髓はおよそ5歳後に黄色骨髓となる。

4,骨の化学成分

 骨は有機物(膠様質)と無機物(石灰質)からなる。無機成分は骨の50%~60%を占める。主にリン酸石灰、炭酸石灰、リン酸マグネシウムなどである。有機物は骨に弾力性を与え、無機物は骨に硬さを与える。酸を作用させて石灰質を除くと、有機成分だけとなり、軟骨のように軟らかくなる。まだ骨を注意して焼くと無機成分だけ残って、骨はもろくこわれやすくなる。幼児の骨は有機物に富むために弾力性があり、骨折をおこしにくく、変形しやすいのである。老人の骨は石灰質に富んで硬いが、有機質が少ないために、骨折を起こし、まだ癒りが遅い。

最終更新日:2010年12月20日