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一、体幹骨の連結
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二、頭蓋の連結
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(一)Columna vertebralis(脊柱)Vertebral column
脊柱は背部の正中にあって、24個の椎骨・仙骨・尾骨などは軟骨・靱帯によって連結されるものである。
1,椎骨の連結
腰椎より上方では隣り合う椎骨は椎弓から出る上・下関節突起の間に出来る椎間関節によってたがいに接触する以外に椎体間の線維軟骨結合、椎弓間の靱帯結合がある。腰椎と仙骨、仙骨と尾骨の連絡もその変形である。
2,椎体間の連結
椎体間の上面と下面はうすい硝子軟骨に被われる。たがいに隔った椎体の間には線維軟骨性の椎間円板が介在し、錐体と椎間円板とが交互に重なって出来る柱を前と後ろから長い前縦靱帯と後縦靱帯が付着して支えてる。
(1)Disci intervertebrales(椎間円板)Intervertebral disc
椎体間にあって厚い円盤状をなすが、脊柱の部位によりその厚さは異なる。また個個の円板ではその中央部がもっとも厚く、辺縁がやや薄い。胸部のそのものはもっとも薄く、頸部と腰部の椎間円板は厚い。円板の外周に近い部は輪状に走る線維を含む線維軟骨性の線維輪からなる。この部の膠原線維は束をなして円板の外周に平行なラセン状の走行を示している。線維輪の中心部には弾力性のある軟らかい膠様組織があって、これを髄核という。椎間円板は弾力性があるために椎骨の可動性を与える他にまた椎骨間の衝激を少なくする作用がある。
(2)Ligamentum longitudinale anterius(前縦靱帯)Anterior longitudinal ligament
脊柱の前面を上下に走る帯状の靭帯で上端は後頭骨底部から起こり、上部では狭く厚いが、下部になるに従って薄くなり、仙椎前面まで達する。深層の線維は椎間円板の前縁とも結合する。前縦靭帯は脊柱の過度の伸展を防ぎ、または椎間円板が前に脱出するのを防いでいる。
(3)Ligamentum longitudinale posterius(後縦靱帯)Posterior longitudinal ligament
椎体と椎間円板の後面に沿い、脊柱管の前壁を縦走する。上端は幅が広く、大後頭孔前縁より約1cm上方の斜台から起こり、下方ほど狭くなって仙骨管の前壁に達する。これは脊柱の過度の屈曲を防ぐ。
3,椎弓間の連結
(1)Ligamenta flava(黄色靱帯)Ligamenta flava
これは相隣の椎弓間に分節状に張っている厚い強い靭帯である。多量の弾性線維を含み、このため脊柱の屈伸に際して椎弓間の距離が変わっても、常に緊張した状態にある。
(2)Ligamentum nuchae(項靱帯)Ligamentum nuchae
後頭骨の外後頭隆起から第7頸椎棘突起にいたる線から深部に向かって正中面に張っている靭帯性の膜である。
(3)Ligamenta supraspinalia(棘上靱帯)Supraspinal ligaments
項靭帯の後方部につづき、胸・腰・仙椎などの棘突起の尖端を連結する縦に走る靭帯である。
(4)Ligamenta interspinalia(棘間靱帯)Interspinal ligaments
棘突起間に張る薄い靭帯で、腰椎では強いが上方に移るほど弱くなる。
(5)Ligamenta intertransversaria(横突間靱帯)Intertransverse ligaments
横突起間を結ぶ短い靭帯である。腰部ではよく発達し、副突起間を結ぶ。
以上の靭帯はいずれも脊柱の屈し過ぎるのを防ぐ作用がある。
(6)Articulationes zygapophysiales(椎間関節)Zygapophysial joints
関節突起間の平面関節である。頸椎ではゆるく、胸椎ではきつい。関節包は薄いが強い。平面関節に属する。
4,脊柱の全体的観察
成人の脊柱の長さは約70cmである。その長さは姿勢により違い、直立より臥位の方は2-3cm短い。すべての脊柱円板の厚さは脊柱長さの約1/4を占め、老人では脊柱円板が萎縮するため脊柱は短くなる。
脊柱は前または後から見た場合すなわち前頭面への投影ではほとんど直線を描いているが、横から見た場合すなわち矢状面への投影では頸部と腰部とでは前方に凸弯し、胸部と仙尾部とで後方に凸弯している。それはそれぞれ頸部弯曲・胸部弯曲・腰部弯曲・仙尾部弯曲といわれる。これらの弯曲は脊柱に弾力性を与え、振動を軽減し、内臓に対し保護する作用がある。または身体の重心にも関係する。
脊柱は椎孔の連続によって生じた脊柱管によって上下に貫かれ、その中に脊髄が入っている。なお各椎骨の間にある椎間孔にて左右両側に開いている。ただし仙骨部では脊柱管は前後の仙骨孔によって外に通じている。椎間孔と仙骨孔は脊髄神経の出るところである。
脊柱をその椎体部で考えると頸・胸・腰・の順に次第に太さを増し、仙骨から再び急に細くなっている。これは人類が直立しているために脊柱の下の方ほどこれにかかる重さが増すためであって、脊柱が水平位を保っている四足獣ではこのような現象を見られない。
脊柱は前後左右への弯曲と縦軸を軸とする回旋とを行なうことができる。しかしその運動量は数個の椎骨の間の運動の総合であって、相隣っている2個の椎骨間の可動性は至って小さいものである。最も可変性の大きいのは頸部で、腰部がこれに次ぎ、胸部はもっとも小さい。胸部の可変性の小さいのは胸郭の存在するためである。
(二)Ossa thoracis(胸郭骨)Bones of the thorax
胸郭は胸部体壁の支柱をなす籠形の骨格で、次の諸骨によって作られている。
胸椎は12個・肋骨は12対・胸骨は1個である。
胸郭は一定の弾力性と活動性があって、内臓を支持・保護する外に呼吸運動に関与する。
1,Articulationes costovertebrales(肋椎関節)Costovertebral joints
肋骨の後端と胸椎の連結は肋椎関節で、肋骨頭関節と肋骨横突関節の2個の関節からなる。そのうち肋骨頭関節は肋骨頭と椎体の肋骨窩の間にあり、平面関節に属する。肋横突関節は肋骨結節と椎骨の横突起の横突肋骨窩の間にある。
2,Articulationes sternocostales(胸肋関節)Sternocostal joint
上位7対の肋軟骨の前端と胸骨の肋骨切痕との間の関節である。ただし、第1肋骨は胸骨柄と直接軟骨性的連結を営んでいるが、第2-第7の肋軟骨は各自別々に胸骨と関節連結を行ない、胸肋関節という。第8-第10肋軟骨は順次にすぐ上の肋軟骨と関節連結を営み、胸骨とは関係がなく、左右の肋骨弓をつくる。第11・12の肋骨は著しく短小で、まったく遊離している。第2胸肋関節が胸骨の柄と体との境のところに相当していることは体表解剖学的に臨床上重要である。
3,胸郭の全体的観察
胸郭はほぼ円錐形のかご状をなし、横径より前後径が短く、下部より上部の方が狭い。上方は胸郭上口といい、胸骨柄の上縁・第1肋骨・胸骨体によって囲まれる。胸郭下口は不規則で広く、第12胸椎・第12対肋骨・第11対肋骨前端・肋骨弓と剣状突起などによって囲まれる。左右の肋骨弓はほぼ直角をなして剣状突起の両側に相会し、胸骨下角を作っている。各肋骨間は肋間隙という。
肋骨の運動は肋骨頭関節と肋横突関節とを結ぶ直線を軸として上下に回転運動を行なうもので、上方に回転するときは胸郭は側方と前方とに拡大して胸腔を拡げ、下方に回転するときは胸郭は狭くなる。このように胸郭の運動による呼吸運動を胸呼吸または肋呼吸という。
頭蓋の連結は2種類があり、それは直接連結と間接連結である。頭蓋の骨のうち、下顎骨は関節により、舌骨は靱帯により頭蓋底と連結するが、その他の頭蓋骨と顔面骨は大部分が縫合により、小部分が軟骨結合により結合されている。
頭蓋を構成している諸骨は下顎骨と舌骨を除いてはみな縫合と軟骨によって固く結合されている。頭蓋の縫合は年齢の成長につれて骨化して消失する。頭蓋底の骨は軟骨結合が多く、これも年齢が進むにつれて骨結合になる可能性もある。以下に頭蓋の縫合を列記する。
Suturae cranii [craniales](頭蓋の縫合)Sutures of the skull
縫合は線維性の縫合であって、骨間の結合組織が著しく少量のものである。対向する骨の線維性被膜の間に、細い線維を多量に含み、また血管を含む中間層が介在している。多くの縫合はそれらによって連結される骨の名を並記した名称を作られているが、一部の縫合はその形状、走行、または部位の名がつく。
Sutura coronalis(冠状縫合)Coronal suture
前頭鱗と頭頂骨前頭縁の間の鋸状縫合で、頭蓋冠の前部を横に冠状に走る。
Sutura sagittalis(矢状縫合)Sagittal suture
両側の頭頂骨が頭蓋冠の正中線上につくる鋸状縫合である。
Sutura lambdoidea(ラムダ(状)縫合)Lambdoid suture
後頭鱗と両側の頭頂骨がつくる鋸状縫合で、矢状縫合の後端から両側に後下方に分岐する縫合腺をつくる。以前は人文字縫合と呼ばれた。
・Sutura occipitomastoidea(後頭乳突縫合)Occipitomastoid suture: 頭蓋底にいたるラムダ縫合のつづき。
・Sutura sphenofrontalis(蝶前頭縫合)Sphenofrontal suture: 頭蓋の外側面で、蝶形骨大翼と前頭骨の間を後方へゆるやかに登る縫合線。頭蓋内面では、前頭骨と蝶形骨小翼の間にある。
・Sutura spheno-ethmoidalis(蝶篩骨縫合)Spheno-ethmoidal suture: 内面で、蝶形骨体と篩骨の間の、蝶形骨隆起の前方にある短い縫合。
・Sutura sphenosquamosa(蝶鱗縫合)Sphenosquamosal suture: 蝶形骨大翼の鱗縁と側頭骨鱗部の間の縫合。
・Sutura sphenoparietalis(蝶頭頂縫合)Sphenoparietal suture: 冠状縫合に始まる蝶前頭縫合のつづき。
・Sutura squamosa(鱗状縫合)Squamous suture: 縫合の形態上の分類としての名称と同一であるが、ここでは側頭骨鱗部と頭頂骨との縫合を指す。
・(Sutura frontalis [Sutura metopica])((前頭縫合))(Frontal suture)【(Metopic
suture)】: 前頭骨が始め左右半部独立して発生するため、前頭鱗の正中線上に生ずる縫合をいい。通常は5~6歳で癒合し消失する。これが成人でも残るときは前頭鱗の正中下部に残ることが多いので眉間縫合ともいう。
・Sutura parietomastoidea(頭頂乳突縫合)Parietomastoid suture: 頭頂骨と乳様突起の間で、後方にある縫合。
・(Sutura squamosomastoidea)((鱗乳突縫合))(Squamosomastoid suture): 側頭骨の鱗部と岩様部とが個別に発生したための縫合の一部が側頭骨外面で頭頂切痕から前下方に走る縫合線としてみられるものをいう。
・Sutura frontonasalis(前頭鼻骨縫合)Frontonasal suture
・Sutura fronto-ethmoidalis(前頭篩骨縫合)Frontoethmoidal suture
・Sutura frontomaxillaris(前頭上顎縫合)Frontomaxillary suture: 鼻骨外側で、上顎骨の前頭突起と前頭骨鼻部の間の縫合。
・Sutura frontolacrimalis(前頭涙骨縫合)Frontolacrimal suture
・Sutura frontozygomatica(前頭頬骨縫合)Frontozygomatic suture: 眼窩外側縁で、前頭骨と胸骨の間の縫合。
・Sutura zygmaticomaxillaris(頬骨上顎縫合)Zygomaticomaxillary suture: 眼窩下方および眼窩下壁にある頬骨・上顎骨間の縫合。
・Sutura ethmoidomaxillaris(篩骨上顎縫合)Ethmoidomaxillary suture: 眼窩内で、篩骨眼窩板と上顎骨の間の縫合。
・Sutura ethmoidolacrimalis(篩骨涙骨縫合)Ethmoidolacrimal suture: 眼窩内にある。
・Sutura sphenovomeriana(篩骨鋤骨縫合)Sphenovomerine suture: 蝶形骨と鋤骨との間の縫合で、鼻中隔にある。連結鋤骨翼が蝶形骨吻につく挟合連絡である。
・Sutura sphenozygomatica(蝶頬骨縫合)Sphenozygomatic suture: 眼窩外側壁で、蝶形骨大翼と頬骨の間にある縫合。
・Sutura sphenomaxillaris(蝶上顎縫合)Sphenomaxillary suture: 口蓋骨の外側で、翼状突起と上顎骨との間にときにみられる縫合。
・Sutura temporozygomatica(側頭頬骨縫合)Temporozygomatic suture: 頬骨弓の外側で、頬骨と側頭骨頬骨突起の間の縫合。
・Sutura internasalis(鼻骨間縫合)Internasal suture
・Sutura nasomaxillaris(鼻骨上顎縫合)Nasomaxillary suture: 鼻骨と上顎骨前頭突起の間の縫合。
・Sutura lacrimomaxillaris(涙骨上顎縫合)Lacrimomaxillary suture: 涙骨の前部で、涙骨と側頭骨頬骨突起の間の縫合。
・Sutura lacrimoconchalis(涙骨甲介縫合)Lacrimoconchal suture: 鼻腔からみえる縫合で、涙骨と下鼻甲介との間にある。
・Sutura intermaxillaris(上顎間縫合)Intermaxillary suture: 前面で左右の上顎骨間にある。
・Sutura palatomaxillaris(口蓋上顎縫合)Palatomaxillary suture: 眼窩および鼻腔外側壁の後部にあって、口蓋骨垂直板と上顎体鼻腔面との平面間の縫合。
・Sutura palato-ethmoidalis(口蓋篩骨縫合)Palatoethmoidal suture: 眼窩後部にあって、口蓋骨と篩骨の間の縫合。
・Sutura palatina mediana(正中口蓋縫合)Median palatine suture: 口腔から見える両側口蓋骨半部間の縫合で鼻腔面に鼻稜をつくる。
・Sutura palatina transversa(横口蓋縫合)Transverse palatine suture: 骨口蓋の後部を横走し、上顎骨がつくる部と口蓋骨が作る部との境界をしめす。上顎骨口蓋突起と口蓋骨水平板の間の縫合。
これは関節連結である。
Articulatio temporomandibularis(顎関節)Temporomandibular
側頭骨と下顎骨との間の関節である。関節頭は下顎骨の頭、関節窩は側頭骨の下顎窩である。この関節では関節包がゆるいが外側には頬骨弓根から下顎頸にいたる外側靭帯があってそれを強めている。関節包内に線維軟骨性の関節円板があり、関節腔を上下に二分している。
下顎関節の開閉運動はほぼ蝶番関節としての運動で、この場合は下顎頭と関節円板との間に運動が起こり、前者が関節頭として後者は関節窩として作用する。両側同時に前後運動は下顎窩と関節円板との間に起こる。水平運動ではないことに注意されたい。口を大きく開ける時は下顎頭と関節円板は関節結節の下方に滑り、もし関節包はゆる過ぎる場合には、下顎頭が関節結節の前方にとび出る可能性があり、これを下顎関節脱臼という。
最終更新日:2010年12月20日