内臓学は内臓器系ともいわれる。むかし体腔内に蔵められた器官をすべて内臓といったものである。しかし現在の系統解剖学では消化器系、呼吸器系、泌尿器系、生殖器系の4系統に所属する器官だけをとりあつかい、生体の新陳代謝に関係するものである。
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一、内臓の一般的構造
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二、胸腹部の体表方向線と区分 |
内臓を構成する器官はその数が甚だ多く、その形態や構造もさまざまであるが、これを大別すると中空性器官と実質性器官の二つになる。
これは内部が空洞になっている器官で、嚢または管のような形をし、代表的なものとして口腔、食道以下肛門にいたる消化管、鼻腔より肺にいたる気道、尿道より膀胱、尿管さらに腎盤にいたる尿路糸、精管を中心とする精路および膣、子宮、卵管などの一連の生殖器官である。一般に内腔側から外壁側へ向かって粘膜、筋層および漿膜(あるいは外膜)の3層を区別する。
これは中空でなくて内部に組織が充実している器官である。その表面は結合組織性の被膜によって覆われ(ときにはさらにその上を漿膜によって包まれる)、内部には器官固有の機能をいとなむ組織すなわち実質がつまっている。代表的なものとして肝臓、膵臓、唾液腺、腎臓、精巣、卵巣および内分泌腺などがある。実質性器官はその表面が結合組織性の被膜につつまれ、被膜からは実質内部に大、小の中隔がのびだし、実質を多くの機能単位の大きさに区切っている。これらの結合組織性の中隔に沿って、臓器表面の一定の部位にある門から出入する血管、神経、導管などが走っている。
体表の方向線というのは部位の表現として必要な用語である。体幹の縦軸を以下の線で表現する。
正中線:体幹の前・後面の中央を走る垂直線で、前正中線と後正中線がある。
胸骨線:胸骨の両側縁に沿う垂直線で、左右2本がある。
乳頭線:乳頭を通る垂直線で左右2本がある。鎖骨の中央を通る鎖骨中線が使用されることがある。
胸骨傍線:胸骨線と乳頭線との中間を通る垂直線で、左右にある。
腋窩線:腋窩の中央を通る線で、中腋窩線とも呼ばれる。腋窩の前、後縁に沿う前、後腋窩線も使用される。
肩甲線:背部で肩甲骨の下角を通る垂直線で、左右にある。
腹部には左右の肋骨弓の最底点を結ぶ横線と、左右の上前腸骨棘を結ぶ横線の2本により、上、中、下腹部の3部に区分される。上、中、下腹部はさらに腹直筋の外縁に沿う左右の2本の縦線によりそれぞれ3部に分けられるので、腹部は全体として以下の9部に分けられる。
上腹部:中央辺で左右の肋骨弓にはさまれる部。
左右下肋部:左右の乳房下部から肋骨弓までの間、体表からは肋骨が蝕れられ、胸部に属する部位であるが、横隔膜円蓋の高さに応じる腹腔の上方領域である。旧名は季肋部である。
臍部:臍の周辺
左右側腹部:臍部の下方部で恥骨結合まで。
左右鼡径部:恥骨部の両側で鼡径溝の高さまで、三角部をなす。