喉頭は気道と発声器とを兼ね、咽頭と気管との間にある。成人では第4-第7頸椎の高さにわたり、新生児では成人のものよりも2-3椎体だけ上がり、老人では1-2椎体だけ下がる。
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(一)Cartilagines et Articulationes laryngeales(喉頭軟骨)Laryngeal cartilages and joints |
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(二)喉頭の連結 |
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(三)Musculi laryngis(喉頭筋)Laryngeal musculature |
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(四)Cavitas larynngis(喉頭腔)Laryngeal cavity |
(一)Cartilagines et Articulationes laryngeales(喉頭軟骨)Laryngeal cartilages and joints
3種の無対軟骨および1種の有対軟骨とからなる。
1,Cartilago thyroidea(甲状軟骨)Thyroid cartilage
不対性。喉頭軟骨のうちで最も大きく、喉頭蓋軟骨と輪状軟骨との間にあって、喉頭前壁の大部分を形成する。左板および右板からなり、この両板は正中線で合して角を作る。これを前角といい、皮下に喉頭隆起(アダムのリンゴ)として触れ、成人男では鋭角をなして突出する。前後の各縁と内・外両面を区別する。前縁は短く、後縁は厚く長くて上下に突起を出し、それぞれ上角および下角という。下角の内面に輪状軟骨の甲状関節面に対する輪状関節面がある。上縁の正中線には深い切痕があり、上甲状切痕という。
2,Cartilago cricoidea(輪状軟骨)Cricoid cartilage
甲状軟骨の下方にあって、下方は輪状気管靭帯を介して第1気管軟骨に連なる。指輪状を呈し、輪の前部は弓形で弓といい、後部は方形板状に拡大し、これを板という。板と弓との境にある小円形の関節面に対応する。板の上縁の中央部は凹み、その両側に楕円形の関節面がある。これを披裂関節面といい、披裂軟骨と接する。
3,Cartilago arytenoidea(披裂軟骨)Arytenoid cartilage
輪状軟骨板の上外側角に載る左・右1対の軟骨で、三角錐体板を呈する。底はその下面に関節面を具えて輪状軟骨の板と関節し、その外側方および前方に突起を出す。外側方のものを筋突起といい、喉頭筋が付着し、前方のものを声帯突起といい、甲状軟骨の正中部との間に声帯靭帯を張る。
4,Cartilago epiglottica(喉頭蓋軟骨)Epiglottic cartilage
杓子形を呈し、下部は細くて甲状喉頭蓋靭帯により甲状軟骨板の後面正中線に連結される。喉頭蓋軟骨の前面は凸で舌に向かうので舌面といい、後面は凹み喉頭に向かうので喉頭面という。
喉頭を形成する角軟骨は、一部分は靭帯結合的に、また一部分は関節結合的に結合され、粘膜にそれぞれのひだを生じる。
1,Articulatio crico-arytenoidea(輪状披裂間節)Cricoarytenoid joint
輪状軟骨の披裂関節面と披裂軟骨の底の関節面との間にある。
2,Articulatio cricothyroidea(輪状甲状間節)Cricothyroid joint
輪状軟骨の甲状関節面と甲状軟骨の輪状関節面との間にある。
3,Conus elasticus [membrana cricovocalis](弾性円錐)Conus elasticus (membrana
cricovocalis)
輪状軟骨弓の上縁、甲状軟骨前角の後面および披裂軟骨の声帯突起の間に張っている膜で、全体として円錐形を呈し弾性円錐と呼ばれる。声帯靭帯は甲状軟骨の後面正中線の外側方から起こり披裂軟骨底の声帯突起にいたり、この弾性円錐の上縁をなしている。輪状甲状靭帯は輪状軟骨の弓と下甲状切痕との間に張り、弾性円錐の前方部をなす。
4,Membrana fibro-elastica laryngis(喉頭弾性膜)Fibroelastic membrane of larynx
喉頭蓋軟骨の外側縁と披裂軟骨の内側面との間に張る。その下縁の一部は披裂軟骨と甲状軟骨の後面とを結合する室靭帯(前庭ヒダの中にうまる)をなす。
5,Membrana thyrotyoidea(甲状舌骨膜)Thyrohyoid membrane
甲状軟骨の上縁と舌骨の下面との間に張る弾性結合組織である。
6,Ligamentum ceratocricoideum(輪状気管靭帯)Ceratocricoid ligament
輪状軟骨の下縁と気管軟骨上縁との間に張る靭帯である。
(三)Musculi laryngis(喉頭筋)Laryngeal musculature
喉頭には、喉頭各部の運動を司る多数の小さな筋ふがあって、外来筋および固有筋からなる。
1,M. cricothyroideus(輪状甲状筋)Cricothyroid muscle
輪状軟骨弓の外側下縁から起こって外側上方に走り、甲状軟骨の下縁および下角につく。甲状軟骨を前下方に引き下げ、声帯を緊張させる。
2,M. crico-aryteoideus posterior(後輪状披裂筋)Posterior Cricoarytenoid muscle
輪状軟骨板後面から起こり、斜め上外側に向い披裂軟骨の筋突起につく。筋突起を後方に引き声門をひろげ声帯を緊張させる。
3,M. crico-arytenoideus lateralis(外側輪状披裂筋)Lateral cricoarytenoid
muscle
輪状軟骨外側部の外面および上縁から起こり、斜め後上方に走って披裂軟骨の筋突起につく。筋突起を引いて、声門を狭め声帯を弛緩させる。
4,M. thyro-arytenoideus(甲状披裂筋)Thyroarytenoid muscle
その内側部は声帯筋とよばれ、甲状軟骨の内面からでて披裂軟骨の声帯突起に付着する。声帯を弛緩して声門を狭くする。外側部は声帯筋の外側にある。声門を狭くし声帯を弛める
5,披裂筋
両側の披裂軟骨の後面にある凹みを充たし、その両端はこの軟骨の外側縁に付着する。披裂筋を横披裂筋と斜披裂筋に区別する。
(四)Cavitas larynngis(喉頭腔)Laryngeal cavity
喉頭は喉頭軟骨および喉頭筋が基礎をなし、その内面を粘膜が覆うている。喉頭内部に喉頭腔があり上、中、下の3部に分かれる。
1,Vestibulum laryngis(喉頭前庭)Vestibule of larynx
喉頭口と前庭ひだとの間にある喉頭上部を喉頭前庭といい、底を喉頭口とする漏斗状を呈し、その尖端は両側の前庭ひだ(仮声帯ともいう)の間にある前庭裂にあたる。前庭ひだは甲状軟骨の内面と披裂軟骨の上部との間にあって、前後の方向にのびている。前壁の下部には喉頭蓋茎および甲状喉頭靭帯による粘膜の隆起があり、喉頭蓋結節という。
2,中喉頭腔
上方は前庭裂、下方は声門裂によって境され、外側方は室ヒダと声帯ヒダとの間に深く入り込んでいる。この部分を喉頭室という。声帯ヒダは甲状軟骨の内面と披裂軟骨の下部との間に矢状方向に張る。ほぼ水平の粘膜であって、左右声帯ヒダの間に声門裂がある。
3,下喉頭腔
声門裂以下で輪状軟骨下縁の高さまでを指し、円錐形を呈し下方にひろがり気管につづく。
最終更新日:2010年12月20日