A,Organa genitalia feminina interna(女の内生殖器)Internal female genitalia

一、Ovarium(卵巣)Ovary
二、Tuba uterina [Salpinx](卵管)Uterine (fallopian) tube, oviduct
三、Uterus(子宮)Uterus [Metra]
(一)子宮の形状
(二)子宮の位置
(三)子宮と腹膜の関係
(四)固定装置
四、Vagina(膣)Vagina

一、Ovarium(卵巣)Ovary

 卵巣は男の精巣に相当するもので、その生産物である卵子を卵管に送るとともに内分泌器としても重要な意義をもっている。卵巣は骨盤の外側壁にあって、卵巣窩に嵌入して矢状または斜めに位置する。卵巣窩は総腸骨動、静脈の分岐角に相当するところである。卵巣に内、外の両側面、上、下の両端および前、後の両縁を区別する。内側面は骨盤腔に向い、小腸に接するが、外側面は骨盤に接する。上端を卵管端といい、卵管の起始部に接し、下端を子宮端といい、固有卵巣索により子宮外角部と連絡する。後縁は自由縁で、前縁は間膜縁といい、ここに溝状の卵巣門があって卵巣の血管、神経が出入する。
 卵巣の外形および大きさは年齢によって異なる。幼女では表面平滑であるが、思春期以後には大きな卵胞の膨出によって半球状の隆起を生じ、また排卵後の組織は瘢痕となり、表面凹凸を呈し、老年者では萎縮して瘢痕のみとなる。
 卵巣の位置を固定するものに、固有卵巣索および卵巣提索がある。固有卵巣索は短い結合組織性筋性円柱状索で、子宮広間膜の前、後両葉の間にあって、子宮底の外側角と卵巣の子宮端を結ぶ。卵巣提索は同じく結合組織性筋性索で、卵巣の卵管端から骨盤側壁に張り、卵巣にいたる血管、神経を導く。

二、Tuba uterina [Salpinx](卵管)Uterine (fallopian) tube, oviduct

 卵管は子宮広間膜の上縁を蛇行する筋性繊維性の細管で、その外側端は卵巣に接触し、内側端は子宮底の外側角で子宮に連なる。長さは約10~12cmである。卵管をその過程によって4部に区別する。内側から外側に向かって挙げると子宮部、卵管峡部、卵管膨大部および卵管漏斗である。

1,Pars uterina(子宮部)Uterine part of uterine tube

 子宮壁を貫く子宮壁内の部で卵管子宮口により子宮腔に開口する。

2,Isthmus tubae uterinae(卵管峡部)Isthmus of uterine tube

 子宮よりの約1/3の部で、水平に外側方に走る細い部である。

3,Ampulla tubae uterinae(卵管膨大部)Ampulla of uterine tube

 卵巣に近い2/3の部で太くかつうねりつつ走り、その外側端はラッパ状に太くなり卵管漏斗をなす。受精は通常卵管膨大で行われる。

4,Infundibulum tubae uterinae(卵管漏斗)Infundibulum of uterine tube

 ここに卵管腹腔口が開き、その尖端周縁には多数の卵管采が放射状に突出する。そのなかで一番長いものは卵巣の表面にいたり、これを卵巣采という。

三、Uterus(子宮)Uterus [Metra]

 子宮は、受精卵を着床させこれを養って胎児となし、また胎児が成熟すると収縮して分娩現象を起こす。

(一)子宮の形状

 前後に圧平された梨状を呈し、長さ約7~8cm,幅約4cm,厚さ約2~3cmである。子宮を底、体および頸の3部に区別する。子宮底は上前部の最も幅の広い部で、その両側角で左右の卵管に結合している。下端の円柱状部は子宮頸で、中央部を占める部は子宮体である。子宮頸をさらに膣上部および膣部の二部に区別する。子宮頸膣上部が子宮体に移行する短い部分は両側から軽度のくびれを示し、子宮峡という。妊娠しない場合には長さ約1cmであるが、妊娠した場合には長くなって、妊娠末期では約7~11cmとなる。
 子宮の内腔は狭く、上・下の2部に区別される。上部は子宮体内にあって、子宮腔という。子宮腔は前後の両面はほとんど接触するほど扁平な三角形を呈し、その底辺の両端には卵管子宮口があって卵管が開口する。下部は子宮頸管といい、管状を呈し、上方は子宮腔に移行し、下方は膣部で子宮口として膣に開く。子宮口は未産婦では横楕円形を呈し平滑鈍円の縁で囲まれるが、経産婦では不正形をなし瘢痕性である。子宮口の後界をなす後唇は前界をなす前唇よりも長く、かつより高く位置する。

(二)子宮の位置

 小骨盤腔の中央で膀胱と直腸との間に位置する。正常位は前傾で骨盤導線より前方へ傾斜するのみでなく、子宮体と頸との間には軽度の前屈がみられる。子宮頸の下端は坐骨棘を結んだ線より上方にあるが、この線の下方に下ると子宮下垂という。なお、子宮の位置はその前方に位置する膀胱および後方に位置する直腸の充満状態により影響されるが、また、妊娠によってその大きさと位置を変じる。

(三)子宮と腹膜の関係

 子宮は膀胱と直腸との間にあって腹膜はこの3者の間に膀胱子宮窩と直腸子宮窩という著しい陥凹を作る。膀胱と子宮との間の陥凹を膀胱子宮窩といい、直腸と子宮との間の腹膜腔を直腸子宮窩またはダグラス(Douglas)窩といい、深く後膣円蓋の後側に達する。

(四)固定装置

 子宮の位置を固定するものに次の子宮広間膜、子宮円索、子宮頸横靭帯および仙骨子宮靭帯がある。

1,Ligamentum latum uteri(子宮広間膜)Broad ligament of uterus

 膀胱を覆う腹膜は、後方に延びて子宮を覆い、さらに子宮の両側で子宮、卵管、卵巣を包んで額面位に張る子宮広間膜をなし、前・後の両葉からできる。子宮広間膜中には内生殖器への脈管、神経、子宮、子宮円索などが入り、さらに卵巣および固有卵巣索は後葉によって包まれる。なお、子宮広間膜の内で、その下部の子宮外側縁に接する部を子宮間膜、上部の卵管に接する部を卵巣間膜という。子宮広間膜は子宮が左右に動くのを防ぐ。

2,Ligamentum teres uteri(子宮円索)Round ligament of uterus

 結合組織性索で、子宮前面の上部に起こり外側方に走ったのち骨盤内側壁に沿って前上方に行き、鼡径管を通って大陰唇の皮下にいたる。子宮を前傾位に固定する。

3,子宮頸横靭帯

 子宮頸から骨盤壁にいたるもので、子宮の下垂を防ぐ。

4,仙骨子宮靭帯

 子宮頸の後面から直腸を外側から抱くようにして後方へ走り仙骨内面の骨膜に着く。子宮頸を後上方に引き上げ、子宮円索とともに子宮を正常の前傾・前屈位に固定する。
 以上のほか、子宮位置の固定にあずかるものに骨盤底の筋肉、膣および周囲の結合組織がある。

四、Vagina(膣)Vagina

 前後に扁平かつその前後両面は拡張に富む膜性筋性の器官であり、尿道の後方直腸前に位置する。膣は交接器であるとともに産道の一部でもある。その上端は子宮膣部の周囲を囲み、膣円蓋を作っている。この円蓋は膣部の後方で特に奥深く、上方は直腸子宮窩に接する。子宮頸の膣部の後方で、膣円蓋に注射針を刺せば直腸子宮窩にたまった膿や血液を容易に採取することができる。膣の下端は膣口もって膣前庭に開く。処女では、膣口の後縁から半月状の粘膜ひだが起こり、前上方に膣口縁をめぐる。これを処女膜といい、交接その他の機械的作用により破れて処女膜痕を残す。

最終更新日:2010年12月20日