間脳下垂体系 [英]diencephalohypophyseal system [独]Zwischenhirn-Hypophysen-System [仏]systeme diencephalo-hypophysaire 川村光毅のホームページへ
“精神医学事典”、加藤正明、保崎秀夫ほか編集、1975,弘文堂 より(その後1993に新版)引用
間脳、とくに視床下部は、解剖学的にも、機能上も、脳下垂体と密接な関連にあり、一つの単位を形成し、自律神経系あるいは内分泌系を介して、全身の発育・代謝機構を支配すると同時に、精神面でも、情動や衝動など、体質全体の調節中枢として重要な役割を演じている。解剖学的には、下垂体後葉は視床下部の延長で、神経葉と呼ばれ、腺組織である前葉に密着している。両者は組織上は別個のものだが、相接して一単位を構成するところに意味があり、とくに下垂体門脈系は視床下部が前葉を支配する過程を明らかにするものとして重視されている。下垂体前葉は、内分泌を介して甲状腺、副腎、性腺などを統括し、これらの諸器官は全身の代謝・発育に重要な役割を演じている一方、情動・衝動面にも大きな影響を与える。たとえば甲状腺機能亢進は、交感神経の激しい刺戟症状とともに、情動の過敏と不安定を示し、低下症状は逆の現象を呈する。下垂体疾患である末端肥大症では、異常に落着いた、のろまな心的態度がみられ、その他、副腎や性腺の異常についても、身体症状とともに、いろいろな精神症状を伴うことがよく知られている。他方、情動性が植物神経系とも密接な関係をもつことは、感情生活の随伴現象や心身症の研究などで十分証明されているし、同時に内分泌との密接な関連も知られている。発育・代謝・情動・衝動の中枢である間脳下垂体系は、各内分泌腺や自律神経のフィードバックにより制御されており、全体的調和を保っている。なお、間脳下垂体系の臨床および実験成績は、クレッチマー E. Kretschmerにより、次の諸点にまとめられている。(1)素質的情動尺度(爽快―沈うつ)、(2)この気分因子と肥胖症―るい痩症との連結、(3)欲動と欲動制御(運動機能を含めて)、(4)灰白隆起における性欲独特の中枢の問題、(5)覚醒―睡眠調節。
(山縣 博)