脳局在論 [英]theory of cerebral localization [独]zerebrale Lokalisationslehre [仏]theorie de localisation cerebrale 川村光毅のホームページへ
“精神医学事典”、加藤正明、保崎秀夫ほか編集、1975,弘文堂 より(その後1993に新版)引用
種々の精神機能がそれぞれ脳の一定の部位に局在することをつとに主張したのはガルGallとシュプルツハイム Spurzheim (1809)だといわれるが、この思想はブローカ P. Brocaやウェルニッケ C. Wernickeの失語症例の臨床解剖学的記述によって、いわゆる脳局在論へと発展する。とくにクライスト K. Kleistは第一次大戦の戦傷例の研究から徹底的な局在論を推進した。しかし局在論のもっともよくあてはまるのは要素的な感覚−運動機能であって、失語、失行、失認やその他の精神機能は局所症状(巣症状)ではあっても要素的障害とちがって単純な局在論ではつくしえない諸問題をふくんでいる。それゆえ局在論には全体論的傾向をもった学説がいつもアンチテーゼとして存在した。第二次大戦後、カナダの神経学者で脳外科医のペンフィールド W. Penfieldは脳手術にさいして大脳皮質の電気刺激に基づいて新たに機能的局在論を実証的に展開した。
(大橋博司)