ロボトミー [英]lobotomy [独]Lobotomie [仏]lobotomie 川村光毅のホームページへ
“精神医学事典”、加藤正明、保崎秀夫ほか編集、1975,弘文堂 より(その後1993に新版)引用
精神外科の中で主として前頭葉に外科的な侵襲を加えることによって精神症状の改善を期待する治療方法であり、正確には前頭葉切載術(prefrontal lobotomy)とよばれる。ポルトガルのモニス E. Moniz (1935)は、精神病者の示す種々の症状は一部の神経細胞間の結合の固着にあるという考えから前頭葉と間脳や視床との線維連絡を断つ前頭葉白質切載術(prefrontal leucotomy)を創始した。その後この方法は米国において発展させられ(W. Freeman & J.W. Watts)、一時期には世界各国で盛んに行なわれた。わが国でも第二次大戦後の一時期に主として分裂病に対して多く試みられた。しかし、これによって好ましくない人格水準の低下や知能低下、時にはけいれん発作といった合併症の現れることやその後の向精神薬療法の出現により治療法としては少なくなっている。手術方法で一般的に用いられるのは、フリーマン W. Freeman, ワッツ J.W.Wattsの標準的な術式(prefrontal lobotomy, standard lobotomy)である。眼窩骨外線縁側方3cm,頬骨弓上方6cmを穿骨点とし、皮膚切開を冠状縫合線に平行して約4cm行ない穿孔する。硬膜に小切開を加えた上であらかじめ脳室穿刺針を正中矢状面垂直に挿入し試験穿孔を行ない、ついで半球内面軟膜より1cm短い距離でロイコトームを正中矢状面に垂直に挿入し、冠状縫合線の走行線に沿って振子運動させて前頭葉白質を切離する。このほかの術式としては、開頭直視下で行なう方法(Poppen, Busch, Scarff), transorbital lobotomy (Freeman), coagulation lobotomy (Grantham), selective cortical undercutting (Scoville)の一つであるorbito ventromedial undercutting (広瀬)などがある。
(武正健一)