気質 [英]temperament [独]Temperament [仏]temperament 川村光毅のホームページへ

“精神医学事典”、加藤正明、保崎秀夫ほか編集、1975,弘文堂 より(その後1993に新版)引用

 クレッチマー E. Kretschmerは、気質を触発性(Affizierbarkeit)と欲動(Antrieb)の2主要因子によって個性を一般的に特徴づける情動性(Affektivitat)の全体的態度であると定義した。また気質とは情動性とともに体液性―神経性機能がその基盤を構成し、体格と気質との関係という問題が生じる。気質はつぎのような精神の質に明らかな影響を及ぼしている。(1)精神感受性の面に影響する。精神的刺激に対する過敏性または不感性を引き起こす。精神感受性比率(psychasthetische Proportion)。(2)気分色彩への影響、心情内容に快不快の色調を与えるが、これはとりわけ、爽快から悲哀に到る段階に沿って行なわれる。気分素因性比率(diathetische Proportion)。(3)精神テンポへの影響。一般に心情の流れを進めたり、阻止したりするとともに、その特殊なリズムに影響を与える(頑固に固定したり、突然飛躍させたり、せきとめたり、コンプレクスを作ったりする)。(4)精神運動性への影響。その一般的な運動測度(敏感だとか緩慢だとか)のみならず、運動の特殊な性格にも影響を与える(跛行、硬化、急速、逞しさ、柔軟、円滑さなど)。
 クレッチマーは、(1)やせ型の体型と親和性のある気質として分裂気質:精神感受性比率は敏感と鈍感の間、精神テンポは跳躍的気質曲線、精神運動はしばしば刺激に順応せず、緊張し、抑圧、跛行、うっ結、硬固、(2)ふとり型の体型と親和性のある気質として循環気質:気分素因性比率は爽快と悲哀の間、精神テンポは波動的気質曲線、精神運動は刺激に順応し、円滑で自然かつ柔軟性、(3)てんかんと相関のある闘士型と親和性のある気質として粘着気質:強靭と爆発との間、精神テンポは粘り強い気質曲線、精神運動は刺激に順応し、緩慢、慎重、重苦しい鈍重を取り出した。

(切替辰哉)